やわらかな春の森の描写から始まり、花の香りと光に満ちた世界が、少しずつ違う色を帯びていく感覚がとても印象的な物語でした。
優しい声色と幼さを残した仕草、そして手にした棍棒とのギャップが、読んでいる側の「安心」と「警戒」を揺さぶってきます。童話の赤ずきんを思わせるモチーフが散りばめられつつも、「森の守り人」としての彼女の在り方は、単純な“正義”や“悪”では語れない複雑さと切なさをまとっていて、その背景にあるものを想像せずにはいられませんでした。
幻想的な森の情景と、そこに潜む違和感が少しずつ濃くなっていく過程がとても印象的で、「赤ずきん」という題材を、こんな形に昇華できるんだ、と感じさせてくれる素敵な一作でした。