第13話 ロザリオ

 礼拝の帰りに昂揚こうようした気分で、クリスマスイベントのチラシ配布を安請け合いしてしまった。


 面倒だったので、チラシはシュレッダーにかけて燃やした。


 それからというもの胃腸の調子が悪い。


 何を食べても吐いてしまう。


 シンクには吐瀉物としゃぶつにまじって、アラレのような十字架状の塊が光っていた。


 奇妙な既視感きしかんを覚えつつも、治るように祈って貰おうと、主日礼拝に参加した。


 厳かで心温まる礼拝のときをもったが、チラシを焼却したことは伏せて、胃腸が弱っているので祈ってほしいと先輩信徒に伝えた。


「もちろん」


 彼女は上着に入れていたロザリオを手に取り、微笑んだ。


 それは吐瀉物の十字架そっくりだった。

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