第2話 B:ダークサイド(レアな? 海外 Rock ガイド)

 最近の若者は、どうしてこんなに保守的になってしまったのか……


  〈 Love & Ghosts of Christmas 〉

   ❣

 以前(数10年前)ジョン・レノンは若者の〝神〟だった。ロックなんか聞かない若者でさえ、ジョン・レノンは好きだったと思う。

 今では、紛争が起きても、誰も〝イマジン〟とか〝ピース〟なんて叫ばなくなった。〝世界の自由〟なんていらない〝ネット〟にすがり〝フェイクな力〟に囲まれ、自分さえ阻害されなければそれでいいのだ。



  〈 Hate 〉

   ❣

 増幅されたノイズの呪物、耳を奪い、侵略するように心を犯す力〝 Love 〟ではなく〝We Hate You〟と叫ぶラブソング。

 Throbbing Glistle の〝第三次世界大戦〟戦略はくしくも果たされたのか。(良い意味でも/悪い意味でも、 Rock 界に多大な影響を与えた、元祖 Noize/Industrial の教祖、TGのリーダー Genesis P-Orridge は、 2020 年に亡くなったそうだ。知らなかった…… Ian Curtis や Martin Hannett たちと、きっと再会したことだろう。ご冥福を、アーメン…… いや、 彼の流儀に従えば I hate you と言うべきか……)



  〈 Deth 〉

   ❣

 The Cure の Robert Smith は、昨年16年ぶりにニューアルバム「Songs of a Lost World」を発表した。未だに当時の暗く沈んだロックを進化させた。最高傑作と言えるかもしれない(Joy division の Ian Curtis が生きていれば…… 彼も……)同質の、詩を乗り越えて昇華させた音楽を、いまだに追及している。

 生き残るんだ。結局、生き残った者が勝ちだ。



  〈 Love Again 〉

   ❣

  The The の Matt Jhonson は、昨年24年ぶりのニューアルバム「Ensoulment」を発表した。彼の残した数枚のアルバムはどれも(ロックらしくない?)完璧と言えるほど素晴らしい完成度。ロックの最高傑作と言ってもいい。

 今回のアルバムは、まったくブランクを感じさせない出来栄えで、かつての「Love Is Stronger Than Death」のように素晴らしい曲が…… 健在であることを示してくれた。(ブランクと言っても、自主映画の音楽制作などを続けたはいたが)

 先日、ニューシングルも発表された。いいよメジャーな活動を再開するのか。(私とほぼ同年齢、ずっと聞いていたいアーティスト)


 「愛は死よりも強い」などと言う(レノンを思わせる)70年代風の曲(しかも名曲)を歌えてしまう。(最も彼は、レノンやビートルズの信奉者ではないだろうが)

 しかし彼の曲はいまだに古くない。先鋭な曲ほど時代性を持っているロックにおいて、この普遍性はどこから出てくるのか。 Punk 以降のアーティストとしては、稀有な存在だった。TheThe の曲はヤワなラブソングではないが、もう一度〝 Love 〟を信じてみようと思わせる。



  〈 Life 〉

   ❣

〝死〟瀕した人類は、Björk 「Utopia」へ向かう。

 そこにたどり着ける人類は、もはや普通の人類ではない、バイオスーツに浸食されたキメラ生物。そこはユートピア、それともデストピア?

 そこで人々は、人工的な母親の子宮体内のように血にまみれながらも癒され、囁き、滝のように逆巻き、荘厳に折り重なった音のレースに包まれる。


 そして新たな生物群へと生まれ変わる。たとえそれが人類にとって望ましい姿ではなくとも。生き延び、新たな愛を得るために。



 〈 Utopia & Dystopia 〉

   ❣

 人は、善と悪、生と死を抱えながら、いつまでも存在し続けるしかないのか……




 (終)




付:

 海外のクリスマスソングを2曲紹介します(今では古く、個人的趣味ですが……)


❄「Noelle a Hawaii」 Antena

 Les Disques du Crepusculeのクリスマスコンピレーション「Ghosts of Christmas Past」から〝ハワイのクリスマス〟と言っても、ハワイらしい曲ではありません。クールで、優しく、悲しい、ボサノバ風エレクトロ Pop 、このシンプルさは衝撃的名曲(今日の Post Rock にも通じる Post Pop?と思っている。当時の不安な感情と、冬のキリッとした朝の空気の感触が蘇る)


❄「Shipbuilding」Robert Wyatt

 Elvis Costello の曲(Robert Wyatt がカバーしたことで名曲となった)この曲も、悲しげで、温かい。いかにもイギリスらしい Winter Song


 心を温めたいとき。霜の降りた寒い朝に、点したばかりの小さな火を見つめるように…… どちらも、クリスマス頃には必ず聞きたくなる、そっとしまってある〝 My Favolite〟





(もし、私の心が少しでも変われば…… たとえ忘れられても…… 2025/11/14)

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「恋人がサンタクロース」 アイス・アルジ @icevarge

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