第12話 転校生

「今日からみんなと一緒に過ごすことになる、転校生だ。じゃあ、自己紹介よろしく。」

星河せいがベルなのじ、です。よろしく頼、お願いします。」

ぺこり、と頭を下げる。


「はい。ありがとうございます。まだ星河さんは分からないことがたくさんあると思うから、困っていたらすぐに助けること。それじゃあ、星河さんはそこの席に。」

「うむ。了解じゃ、です。」

そう言って転校生、星河ベルは用意された席に座る。

同時に注目が集まる。

当然のことだ。


転校生?

珍しいね。

なんでこんな時期に?


ぼそぼそと、声が聞こえる。

「はい静かに。朝のホームルームの続きやるぞ。今日は……」

先生が話だしたことで静まり、視線はそちらに移される。


ついにこの日がやって来た。

ベルが僕の高校に転校してきた。

胃が痛い。

ベルが宇宙人とバレるようなことが起きれば、世界的事案になることは確実だろう。

勿論、対策はしてある。


まずは、言葉の矯正だ。

僕はいいが、流石にみんなの前で古風な口調で話せば、悪目立ちすることは避けられない。

そもそも何故そのような口調で話しているのか訊けば、最初に地球に来て解析をおこなった際、元々ベルが惑星マーサで話していた言語に一番近かったのがその口調だったので、それと結びつけるように日本語を習得したら、いまの口調になったらしい。

普通にしゃべるのと、古風な口調でしゃべるのと、地球人の僕には何が違うのか、同じ日本語だろとは思うが、実際にそうなっているので、ここは飲み込むしかない。


ならばと、僕はベルに日本語を再解析させ、僕以外の人との会話は普通の口調で、目上の人に対しては丁寧な口調で話すようにさせた、が、やはり古風な口調の方が元々の言語にあってるらしく、かなりそれが先行している。

本人も、少し疲れる、とのことだ。

だが、話せてはいるし、時間が経てば適応していくとのことだったので、この対策は完了といっていいだろう。


次は、耳あたりについている謎の機械だ。

髪型と髪色は奇抜だが、僕の高校の校則は緩く、あってないようなものであることに加え、お金と労力がかかることから対策をしないことにした。

しかし、機械はやらなくてはならない。


どうするか。

僕はかなり頭を抱えたが、ベルの一言で、一瞬で解決した。

「透明化できるぞ。」

ちなみにその気になれば全身も透明化できるし、表面に任意の映像も映せるらしい。


最後は設定の追加だ。

出身地、出身校、好きな食べ物、趣味などなど。

訊かれそうなことは予め返す言葉を決めておいた。


以上。

これで完璧。

そんなわけがない。


身長だ。

これに関してはどうすることもできなかった。

成長が急に止まったという言い訳が、果たして通じるだろうか。

いや、実際に身長はもう伸びないらしいから、嘘をついているわけではないんだが、まあ、誰も信じないだろう。


加えて、ただでさえイレギュラーな状況なんだ。

どんなことが起きるのか見当がつかない。

ベルが直ぐに対応ができる僕のクラスに転校してきて助かった。

いや、ベルが仕込んだのか?

どちらにせよ、ありがたい。


頼む。

上手くいってくれ。

僕は心からそう思いながら、ホームルームの時間が終わるのを待った。

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