第2話 7日前抽選編
9月中旬になり七日前抽選申し込みが始まる。
前回の失敗を糧に情報を収集し、行きたいパビリオンを絞り出す。
「なんとしても一カ所だけは確保しておきたい。であれば、ならびのチャンスがありそうなものは、断腸の思いで今回外す! モンハンはそもそも私が未プレイ(同行者はプレイ済み)だった、諦めよう。一回の入場人数が多い大型の箱、人気のなさそうな時間帯を狙い撃ちだっ! 完璧! これで完璧だ!」
しかし、すべて落選・・・・・・。
「うそだろ・・・・・・。またもやデータ戦略が通用しないとはっ! 恐ろしい子。万博・・・・・・」
「しかし、一回しか行けない万博。しかも、遠征。ひとつくらい当たってくれてもよくないですかぁ!!!!」
血涙を流し咆吼するポンコツ。
同時にどんどん焦りと緊張が増してくる。
「当日、私は乗り切れるのか? 死ぬのではないか?」
そう、万博に行く予定を友人達に話すと第一声が「夜行バスで行くの!?」だからである。
「暑いのに? 寝不足で? 人混みの中を? 死ぬよ?」
まったくもってそのとおり。
反論の余地はない。
だがしかしぃ!! それしか方法がないのである。
日程の関係上、前泊はできない。チケットはすでに9時入場で購入済みだ。帰りは新幹線を使えるかも知れないが、いいですか我が郷に帰るには新幹線の駅からさらに数時間かかり終電の時間も早い!!!!っていうか、疲れた万博帰りに電車の乗り継ぎとか通常移動車の民では無理、無理なんです――!!!!
「ならば、体力を温存するためにトラブルを極力回避。不要な並びを排除すればいいのだ。抜かりない。ショップの待機列が酷いことは知っている。だったら当日はお土産列には並ばなければいいのだっ!」
メガネをクイと押し上げ、公式ショップで事前発注。
「スマホトラブルがありそうだから、すべてのチケットを印刷! 電車の乗り継ぎ情報も印刷し、旅のしおりを作り家人に共有!」
入場チケットは印刷しネックホルダーに入れる。
つじさんの地図も印刷し、ミウラ折りにしてポケットサイズにする。
このデジタル万博でも最後に勝つのは紙かと思うと少し滑稽だ。
同行人より「折りたたみ椅子、必要らしいよ」とのアドバイスを受け、折りたたみ椅子を通販で発注。
そして、家人より「本当にヤバかったら迎えに行くからね。車で6時間かかるけど、それまで頑張ってね」との温かいお言葉をいただく。優しさに涙ぐむ好き♡
たぶんポンコツ具合に不安を感じたのであろう。
そして、三日前空き枠先着予約申し込みの日がやってきた。
先着申し込みはどちゃくそ弱いポンコツである。
しかし、頑張らねばならぬ。
この頃から、万博サイトの繋がりの悪さは話題になっていた。
私は自宅のルーターの電源を一度きり、再度つける。
PC&スマホを再起動かけた。
そうして、1時間前の23時にアクセス。
このとき待機列は15分で、PCとスマホの二台でチャレンジ。
「チャンスはたぶん一回・・・・・・。厳選して確実にとれるところを狙いたい。万博の目的は、海外・国内・シグネクチャーパビリオンをそれぞれひとつずつ攻略することだ。ならば、待機列のある海外パビリオンは排除っ! 国内は住友のライン抽選と当日予約に賭ける! ならば狙うはシグネクチャーパビリオン! null2は早朝の並びに賭けよう。『いのち動的平衡館』キミに決めた!!」
『いのち動的平衡館』は、生物好きなら絶対入っておきたいパビリオンだ。
どうしても行きたくて七日前予約でもチャレンジしていた。
とりあえず神に祈り、運に賭ける。
リロードを繰り返し先着枠に挑む。
「くっそ! スマホは何故か並び直しになったぞっ! 頑張れPC! キミが頼りだ!」
ターン! 高らかに鳴るエンターキー。
「でた! 『いのち動的平衡館』9:50! ここだ!」
ターン! 祈りを込めてエンタキーを叩く。
「とれ・・・・・・! とれたぁ・・・・・・!!」
むせび泣くポンコツ。
「やっと・・・・・・、やっと、私の理論が通用した・・・・・・」
幾度となく叩き潰されてきた私のデータ理論。
打ちひしがれ絶望の中にいた私に差し込んだ一条の光。
「・・・・・・よかった・・・・・・。これで一カ所は確実に入れる・・・・・・!」
私は準備してあったつじさんの地図に赤々と○を書き込む。
『いのち動的平衡館』である。
そして、つぎはタクシーアプリの予約である。
アプリを開けて予約しようとするが、なぜかタクシーアプリでは3日前の計算が万博アプリとは違うようで予約できない。
「くっそ! 『この××日前から受付』というのがやっかいなんだ! 世界基準で統一してくれっ!」
悪態をつくポンコツ(下調べをしておけ)。
翌日にタクシーは予約し、ホッと一息ついた。
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