夏のじっとりした空気の中で進んでいく語りが、「気づけば戻れない場所に来ていた」という感覚とぴったり重なっていて、読んでいてぞわりとしました。
友だちを想う気持ちから始まった行動が、気づけば人ならざる世界への入口になっているところに、物語としての余韻があります。
日常の延長線上に、さりげなく“ばけものたちのいるところ”が口を開けている感じがとても好きです。
怖さだけでなく、ユウやトバリとの会話のテンポや、主人公の素直なリアクションもあって、読後には少し不思議で、どこか切なくて、それでも続きが見たくなる一篇でした。