第18話 ディアナ

—————砂の大地


灼熱の中、ヨルは人間達と、楽しそうに石を加工したり、わっせわっせと汗まみれで運んだりしていた。

笑いが絶えず、時折誰かが怪我をしても、ディアナが「痛いの痛いの、飛んでけ~」と声を掛け、本当にそれで治ってしまってい、手を叩く音と歓声が巻き起こる。

それを離れた場所から、寂しそうな瞳で見つめる魔女の様な恰好をしたルナがいた。

「ヤミ、大丈夫?」

ディアナが声を掛けると、顔を真っ赤にしフルフルと俯いてしまう。

ヨル達も心配して見に来るものの、そこはまた楽しく笑い合う場所へと変わっていく。

その笑い声の中に、ヤミの姿はどこにも無かった—————…



情景は粒子となり、再び白い空間



ヤミの様子は気になるけれど、今はそれよりも

「月影、ディアナがやっていたあれって、私にも出来るんじゃ?」

(…ああ)

短く答える月影に、若干の違和感を感じるも、私は捲し立てた。

「じゃあ…その力なら、ヨルを!月影も!」

(…俺に、そんな資格はない。続けるぞ)

金色の瞳を閉じる月影に、私は飛び付き

「ちょっと待って!」

(…どうした?)

「どうしたじゃないよ、もっとちゃんと説明してよ…いつもみたいに…」

(…すまない、今は、時間が無いんだ—————…


その寂し気な瞳と声で、私は予感してしまうのだった—————…




—————燃える世界


炎が夜空を赤く染める中、逃げ惑う人々を踏み潰そうとする山の様に巨大なヨル

そして今まさに、巨大な石の神殿を、世界を焼き尽くす様な灼眼で睨みつけた。中にいる大勢の子供達がその光景で言葉を失い、ただ抱き合い、震える中。


「まおう様!どうか鎮まりください!まおう様!!」


神父とシスター達が総出で跪き、両手を振り挙げては頭ごと地に付ける。


ヴォオオオォォ!!


祈る人々目掛け、にくきゅうを振り挙げた!


「きゃぁぁぁあああ!!」


震えあがり、互いに抱き合う子供達。ヨルはその頭上に容赦の無いにくきゅうを振り下ろす!


「ヨル、ダメ!!」


ディアナだ。だが、ヨルまでの距離は遠く、間に合うはずも無かった。だが—————


「ヨル…メッ!!」


一言だった。たったその一言で、ヨルはピタリと止まり


ヴゥォォぉぉ…


弱々しい咆哮と共に白い光に覆われていった。

収まると、黒いこねこがとさっと倒れた。

ディアナはゆっくりと近付き、小刻みに震えながら


「ヨル…どう、して…?」


顔面を蒼白にし、口に手を当てへたり込んだその時、背後から飛来した黒い翼がディアナの胸を貫いた。

飛び散る鮮血がヨルの顔を半分覆う。


「っ!?」


ゆっくりと胸から飛び出た血塗れの翼をなぞり、ディアナはハッと目を見開いた。


やがて、その瞳を深い哀しみの色に染め


—————ごめんなさい、ヨル。本当に…ごめんなさい…


ぽろぽろと大粒の涙を零し、それがヨルの顔を濡らす。

ゆっくりと開かれたヨルの瞳は、金色となっていた。

粒子となり消え逝くディアナがその金色の瞳に映り


待って…行かないで…


か細い声で、手を伸ばすヨル


—————かならず…いつかきっと、また…あえるから…


そう優しく微笑んで、ヨルの首に何かを掛けた


…と…っても…よ…く…


最後まで言い終える前に、その微笑みは光の粒となって空へと散っていった

それはまるで、涙の様に煌めきながら—————


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