異世界で唯一の癒しってあーぶら
油に溺れ死んだ本郷 条 改め ユキセ・ルイーオ。
時は進み3年後、彼は11歳にして魔術の神童として名を馳せていた。
「おいユキセ!今日も修練場に集合な」
「悪い今日は、ケーキ屋にレシピ売ってギルドに討伐の報告、その後はピアノの演奏
して、小説の出版とあ、あと魔術教会に魔術詠唱破棄について指導しなくちゃなら
ないから先帰るよ」
転生してからというもの、前世の知識をフル活用し匿名で数々の叡智を残し都市の発展に貢献してきた。また冒険者として、ユニーク魔法を覚えてからはS級冒険者になり賢者と呼ばれたり、パーティを追放されたり、魔王と戦ったり色々あったが
今は転移魔法について調べるために、王立魔術学園に通っている。
本来は成人(18)が通っているが、特例で許され学友と切磋琢磨しつつ多方面に顔を出しているので、正しくは勇者・賢者・神童・追放者・匿名情報提供者として名を馳せている。
「ちぇっ、お前の油田魔法を打ち破る策を考えてきたんだけどな」
「また明日、相手してやるよ」
「言ったな!約束だぞ!!」
ユキセは手を掲げ、その場を後にした。
数々の野暮用を済ませ、帰宅するやいなやルイーオ家自慢のメイードが怒鳴り込んでくる。
「また街でユキセ様の噂を聞きましたよ!?どれだけ働けば気が済むんですか!?」
働きたくなんてない。願わくばソニアのふとももをふとももしていたい。
忌むべきは社訓だ、364日も同じ生活を続けていれば異世界に来た程度で辞められるはずもあるまい。結果、3年で偉業を成し遂げ続けてしまった。
「別に俺だって寝たいよ!!」
「寝ればいいじゃん!!」
「無理だよぉぉぉ~ぃぉぃ」
「あぁぁあ、泣かないでユキセ様ぁ。
あ、そうだ今日はとっておきの油を仕入れたんですよ」
「最高だソニア、キスしてもいいか」
「はいはい、口内の油がなくなったらね~」
そんな彼の唯一の癒しが油の経口摂取だった。
ストレスを感じれば油を飲み、痛みを感じれば油を飲んだ。それで全て収まってきた。
しかし、ここ最近油を摂取しても摂取してもストレスが消えず蓄積していく一方なのだ。そのおかげで11歳の若さで髪の色素が落ち切ってしまった。
「せめて、魔術研究くらいは休んだらどうです?
ご自身の魔法ならいざ知らず、転移魔法にまで手を出し始めたとか...」
「いや!!あれが最優先事項だ!俺は!」
彼は現状を打破するため、思考を凝らし一つの結論へとたどり着いた。
「灯油が飲みたい」
転送魔法を調査する理由なんてそれくらいしかないしな。
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