異世界転生で得するのって誰?
なめたけ
異世界転生するのってだーれだ?
「灯油って、軽油より旨いなぁ...」
本郷 条が死ぬ直前に思ったことはそれだけだった。
ガソリンスタンドに倒れているのは彼自身。
364連勤帰りに食べた次郎ラーメンに背油が足りなかったことからくる、
油欲に負け灯油・軽油・ガソリンのフルコースを飲み干した。
その結果、床に倒れている条だったものを見下ろす羽目になった。が、
「死んだら幽霊になるんだなぁ!」
死ぬまでに知りたいこと100選のひとつを解消することが出来たことで、つい笑ってしまった。殴られると思い、すぐに目と口を引き結ぶ。
その拍子であることに気が付く。
「口が油ギッシュギシュしてないな...?
油分を大分口に含んだのは多分さっきだけど、自分の部分的な記憶だから
あてにならないブンねぇ」
「...はい?」
独り言に反応されるとは思わず、パッと目を開いた。
「あんただれだ...?」
364連勤で、とっさに目を瞑ったのが悪かったとはいえ
枕がド深夜コンクリから青空美少女ふとももに変化する夢を見るなんて予想だにできなかった。
「あんたって...もしかして私のこと忘れちゃったんですか?」
「あぁ...俺を迎えに来た天使か?優しくしてくれパトラッシュ」
再び目を閉じる彼の頭に、そっと手が触れる。
「私はパトラッシュじゃなくてソニアです!
...やっぱり思ったより強く頭を打っちゃったんだユキセ様...」
「ユキセ...?誰...??」
「あなたの事ですよ、ユキセ・ルイーオ様。
私はメイドのソニアです。少しは思い出していただけました?」
?マークを頭に浮かべる条を見るなり、慈しむように撫で続けるソニア。
「やっぱりお医者さんに見せますかねぇ」
「悪いけどそんな時間ないんだ、家に帰らないと」
状況が分らない条を突き動かすのは、
10ある社訓のひとつ「体が動くかぎりは働く」。
死ねたと思っていたが、手足の感触がある以上明日も働かなくてはならない。
空が青いということは、明日ではなく今日なのかもしれないが休めるだけ休みたい。
柔らかなふとももに後ろ髪に引かれながらも強い信念で立ち上がる。
「なんか、俺身長低ない?」
身長180を活かし高校生の頃はバスケットボールでブイブイ言わせていた彼だったが、最近は邪魔だと言われコンプレックスになりかけていた身長があまりにも想像をかけ離れていた。あまりのショックからよろけてしまう。
手元にあった桶の水面映る自分の姿は、本郷条ではなく聡明そうな少年だった。
「もしかして、異世界転生ってやつでぇすか~~~??」
こうして、社畜of社畜 本郷 条はユキセ・ルイーオとして転生を果たした。
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