墓代

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　墓代を送ってくれ。

　母親から久しぶりにメッセージがきたと思ったらこれである。金の無心ならば「イタリア旅行したいから」とでもいえばいいんだ。まぁ、どのみち渡す金などないが。

　ない。

　そう一言だけ添えてブロック。安月給の一人暮らし。仕送りなどする余裕はない。死後のために使う金などなおさらだ。

　しかし、死ぬ歳か。親も。

　スマートフォンに入っている銀行アプリを見る。口座には、十数万。何かあれば一瞬で消し飛ぶ金額。いや、部屋の更新があるから、来月にはもう尽きる。親兄弟であっても無い袖は振れん。どうぞ、無縁仏にでもなってほしい。そして俺も……

　……俺も死んだら、誰からも弔われず、思い出される事もなく消えていくのか。

　生活の目処も、死後眠る先も定まらない。

この先俺はどう生きてどう果てるのか。少なくとも、墓代は用意できそうにない。

　……

　ブロックを解除し、三万までならと母親に送る(まったく足りないだろうが)。明日から、単発のバイトを入れよう。

　地獄の沙汰も金次第。世知辛いものだ。