歪でも、不格好でも

吉本 冬呉

歪でも、不格好でも

生まれた時から


あふれていたもの


涙と笑顔に包まれて


大きくなるうち 忘れもするが


気付けばいつでも すぐそばに


全身で受け止めて


全心で分け与える


そうして皆んな 育っていく


それこそが人の営みなんだと


俺には気付けなかったんだ


皆んなにとっては ありふれたもの


注がれた分だけ 受け止めた


俺にとっても ありふれたもの


でも注がれた分すら


受け止められなかった


気付いた時にはもう遅かった


欲しがることは浅ましいと


求め方すらわからずに


ゆがんだままに


模倣もほうした


聞きかじっては


くだらないと笑った


いざ目の前にしたら


とても綺麗きれいに見えた


それでも欲しいと言えなくて


創り上げたのは 不格好な贋作がんさく


それでも自分で形にしたものは


悪くないと思えた


これでもいいと強がれた


ゆがんだままでも 不格好でも


皆んなにとっては


贋物にせものだけど


俺にとっては


確かにるもの


失う前から失くしたものが


ただると知る


それだけでいい

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歪でも、不格好でも 吉本 冬呉 @Tougo_Yoshimoto

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