就活失敗アンドロイドは政府機関の狩人になりますーtype 2210ー
ハル
第1話 出会い
ぼろいアパートの、ベッドの上に横たわったままでいると端末に通知がくると見てみる。
【ウラノス社 採用試験 不合格通知】
・・・また落ちた。
最高峰の大企業ウラノス社に応募して何度目かの不合格。
【貴殿のスペックでは当社が求める、アンドロイドに欠けるものがあります】
アンドロイドとしてなにが欠けているのだろう。
ため息を零し仰向けになりながらどうしたものかと思いながらも立ち上がり服を着替えへ街へと繰り出す。
ネオンが煌めく巨大都市。
夜空を彩る蛍光色のネオンや高層ビル。
広場には大きな青い石が置かれている。
街角には、ウイルスに汚染された機械・・・テクノデーモンの討伐依頼書がびっしりと張り出されている。
【テクノデーモン討伐 緊急募集 ギルド窓口まで】
街の中は少し騒がしく、車や様々なアンドロイドや人間が交い、人が店の前で話していたりと賑やかだ。
一流企業の会社に就職するはずだったのに、テクノデーモンを狩るギルドで働いて生計を立てている。
そして、今日は休日でゆっくり街で過ごしていたのだが後ろを歩いていたアンドロイドが軋むような悲鳴をあげ犬のテクノデーモンへと姿を変え襲い掛かって来た。
髪を揺らし、冷却装置が起動していないのか身体が熱くなる。
薄暗い路地裏に逃げ込んだ。
排煙ダクトから煙が出て匂いが鼻腔センサーがくすぐる。
何処までも灰色しかない路地裏で、行きついた所は行き止まりで絶望していると、ガシャガシャと音をたてて、銀色の巨体な犬型のテクノデーモンがじりじりと迫って来る。
鋭い爪を地面を時折、引っ搔くと甲高い音が鳴り、耳を塞ぎそうになる。
アンドロイドの私がなぜ襲われているのだろう。
もしかして、新種のウイルスだろうか。
唸り声をあげ、犬型のテクノデーモンが口を開くと、その牙には自分以外にも被害者がいそうな赤黒い液体がべったりと付いている。
私の事を追いかけながら他の誰かを襲ったのだろうか。
本来、テクノデーモンは人間しか狙わないはず。
私はアンドロイドだと言うのに、なぜテクノデーモンが私を狙うのか。
そんな思考がよぎった瞬間、テクノデーモンが飛び掛かってくる。
死ぬんだ。そう悟り目を閉じた瞬間、派手な音が響いた。
少し経っても痛みも熱も死も訪れなく、その代わりに「逃げた犬は討伐したわ」と言う声が聞こえてきた。
その声を合図に目をゆっくり開けると、目の前に立つ彼女の紫の長い髪が、月明かりを受けて風に揺れているのが見えた。
先ほどのテクノデーモンを見るとバラバラになって転がっていた。
見知らぬ女性が「大丈夫?怪我はない?」と声をかけられながら、羽織っていたコートを私の肩にかけてくれた。
「あ、ありがとう・・・ございます」
お礼を言うとそのまま軽々と抱き上げられ、路地の外に連れて来てくれた・・・のだが、そのまま待機していた車の後部座席に押し込まれる。
えっーーと思ったが、女性も後部座席に乗り込むが運転席には誰も居ない。
自動運転なのだろう。
「何処に連れて行くんですか?」
淡々とした口調でと女性に聞くと「念のために、検査をうけてもらわないと」と言われたため、病院ではなく検査?本当に何処に行くのだろう。
車が走り出すと女性が口を開いた。
「私はアクアディンゲンの者なの」と告げてきて私は目を丸くする。
アクアディンゲンは政府の中でテクノデーモンを狩る機関。
特にネームドと呼ばれる強いテクノデーモンを狩っていると噂だ。
そんな所の人間が、何故あの場所に?偶然?でも、逃げた犬とか言っていたしと考えていると「私はメル。君の名前は?」と聞かれる。
「androidーhuman type 2210です」
型番で呼ばれる方が落ち着く。
「2210・・・ちょっと硬いわね。これから、どう呼べば良いかしら?」
その声は、どこか優しくて、どこか試すような響きを帯びていた。私は少しだけ頬を緩めて、答えた。
「・・・なんでも、いいですよ」心臓の奥ーー人工心臓のはずなのに、なぜか熱を帯びている気がした。
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