置いていかれて

@compo878744

第1話 隠された上履き

僕は今、修学旅行で京都に居る。

いや、居た。

さっき逢坂山の峠を越えたから、今はもう滋賀に入ったかな。


修学旅行ではあるんだけど。

僕は1人だった。

比喩や形而上的な表現ではなく。

僕は1人だった。

東海道を1人で歩いていた。


バス?新幹線?

行きは乗っていたんだけどね。

級友?とね。

お金?携帯電話?

無いよ。

全部入ったスポーツバックだけが、新幹線に乗って行ったから。

多分。


そのバックはもう東京に着いただろうか。

誰が管理しているのか、それともいないのか知らないけど。




ええとまぁ、僕を簡単に言うと。

僕は普段から虐められている。


…んだろう。


僕自身にその自覚があまりないし、そもそもどうでもいいからだ。


暴力こそ振るわれていない。

が、無視や物を隠されるは日常茶飯事だ。

上履きを隠された事なんか何回あるか。


クラスメイトがくすくす嗤う中を僕は気にせず、1日靴下だけで生活した。

帰りに校門前の学販店で新しい上履きを買い、次の日からはその上履きを履いて過ごしたけれど、次の日にまた隠された。


そして僕は再び靴下で過ごし、帰りに新しい上履きを買う。

店の主人も途中から事情を聞いて来たけど、何故か無くなるから、と普通に答えたら絶句された。

以降、何か言われる事はなくなった。


その間、僕は一切誰にも現状を訴えなかった。


ある日、「8足(内使い古し1足)」の上履きが、無理矢理に僕の下駄箱に押し込まれていた。


僕は新しい上履きに履き替え、今履いて来た外履きスニーカーをバックに入れて、何も言わずに教室に向かった。

以来、僕は下駄箱を使っていない。

専用のシューズバックを持ち歩いていた。


一度はそのシューズバックも隠されたけれど、僕は上履きで帰宅して、翌日は新しい外履きで登校し、新しい上履きで1日を過ごした。


その翌日、僕のシューズバックは机の上に戻されていた。

けど、僕はそのシューズバックには触らなかった。


新しいシューズバックを机の脇のフックにかけて、そのシューズバックは肘で机の下に転がしたまま、中を確認しようとも思わなかった。


結果、学校での僕の周りには、大量のスクールシューズが無造作に転がっている。


上履きやシューズバックには名前が書かれているから、間違えようがない。


でも僕は教師にも訴えず、ただ僕が1人で出来る対処を黙ってし続けた。


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