第2話 呪いを払う男
保健室の天井を眺めていると唐突に声をかけられた。
「やあやあ。君かね、呪われた後輩というのは」
扇子で仰ぎながら3年生が入ってきた。
三白眼に左腕には無数の切り傷。
やばい人が来た。
「思ったよりも元気そうで結構。結構。おっと自己紹介がまだだったね。学園の呪いを一手に引き受けるオガミ部が部長。尾上迅だ。覚えておきたまえ」
一息に散らかった思考のままに言いたいことを言い切った。
無遠慮にベッドの端に腰を下ろしたかと思うと、淑女対するように恭しく、しっとりと右手を取られた。気持ち悪い。
「二色の呪いとはこれまた珍しい。相当複雑な感情で呪いをかけられたものだね」
「二色の呪い? 刻印は一色なのですか?」
「常識だよ君。呪いとは感情の発露だ。呪った人物の感情に呼応した色が刻印に反映される。一年生だ。この尾上が教えてあげよう。なに礼など気にしなくていい」
「呪いは解けるのですか」
「待ちたまえ。呪いを解くには情報を整理して社様へ返上する必要があるのだよ」
「社様?」
「君の呪いを代行した神様だ。呪う方法は、おいおい教えよう。今は解く方が優先だ」
胡散臭いなコイツという思いを飲み込むためにこくりと頷いて見せた。
「知りたいことは、4つあるのだよ」
一つ一つ指を折りながら勿体つけて語る。
症状
トリガー
動機
呪術師の名前
「君を呪った犯人に心当たりはあるかね」
「ないです。人から怨みを買うほど人付き合いはしていないので」
我ながら言い切って恥ずかしい。
「ふむ。質問を変えよう。3日以内に君の手に触れた人物は誰かね」
「幼馴染の紗奈と保健委員の凪さんが衛生チェックの時に……」
「ではどちらかが犯人だろう。まあ、動機は自分の胸に手を当てて考えてみたまえ」
ここ数日の行動を思い返しても恨まれる要素は思い当たらない。紗奈とは、家で本を読み耽るくらいには仲良しだ。凪さんとは隣の席という以外に関わりが無い。
「先輩、トリガーって何ですか」
「トリガーとは発動条件とも言える。君が特定の行動をした時に定められた呪いが降りかかるのだよ」
呪いなんてオカルトじみているが、実態は約束事に従う
「教科書を捲ったら腹が痛くなりましたし」
「トリガーはそれか。残りは、誰が呪ったか」
「保健委員の凪さんだと思います」
紗奈が呪うなんてことは無い。ただの希望的観測だと分かっていながらも口にする。
「ふむ。言い切るなら、呪詛返しを試してみようか」
「呪詛返し?」
「見ていたまえ。社様に返上して呪いは無くなるはずだ」
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