罰ゲームで幼馴染を女装させたら、滅茶苦茶可愛くなったんだが!?

間咲正樹

罰ゲームで幼馴染を女装させたら、滅茶苦茶可愛くなったんだが!?

「ああーん、待って! ちょっとだけ待ってよ幸希こうきー!」

「へっへーん、誰が待つかよ、オラァ!」

「ああーーー」


 今日も隼人はやとの部屋で、最近人気の格闘ゲーム『公務員ファイター』に興じる俺と隼人。

 家が隣同士なこともあり、子どもの頃からほぼ毎日この部屋で遊んでいるので、最早自分の部屋より居心地がいい。

 さてと、今ので俺の五勝目だな。

 どちらが先に五勝できるか勝負していたので、見事に俺の勝ちだ。


「だから言っただろうが。お前ごときの腕じゃ、俺には絶対勝てないってな」

「むぅ~、ちょっとぐらい手加減してくれたっていいじゃ~ん」


 リスみたいに頬をぷくぅと膨らませる隼人。


「ふん、そんな顔したってダメだぜ。さぁ~て、罰ゲームは何をやってもらおっかな~」


 負けたほうが何でも相手の言うことを聞くっていう約束だったからな。


「あ、あんま痛いのとかは勘弁してね?」

「んん~?」


 上目遣いでうるうるした瞳を向けてくる隼人に、俺の中の嗜虐心がゾクッと刺激された。

 そうだ――。


「そういえばさぁ、前から隼人にやってもらいたかったことがあんだよ」

「な、何?」

「フフフ――ちょっと女装してみてくれよ」

「えっ!!?」


 隼人は華奢で女の子っぽい顔してるし、絶対女装似合うと思うんだよな。




「ど、どうかな?」

「――!!」


 オドオドしながら部屋に入ってきた隼人を見て、思わず絶句した。

 隼人はセーラー服を着ていたのだ。

 隼人の姉ちゃんのセーラー服を勝手に借りたのだろう。

 ――こ、これは……!

 セーラー服を着ただけで、メイクとかも一切してないのに、こいつ滅茶苦茶可愛くないか!?

 長いまつ毛にサラサラショートカットの黒髪。

 潤んだ大きな瞳にぷるんとした唇。

 ポカリスエットのCMに出てきてもおかしくないくらいの、超絶美少女じゃないか!?

 とても男には見えない……。

 こ、こいつぁとんでもない扉を開けてしまったかもしれねーぞ。


「ね、ねえ、黙ってないで何か言ってよ幸希ぃ。これ、すっごく恥ずかしいんだからね」

「あ! ああ、そ、そうだな、うん」


 頬を染めながらもじもじしている隼人。

 ヤ、ヤベェ……!

 さっきから心臓がメッチャドキドキしてる……!

 いやいやいや、あり得ねーだろ俺!?

 女装した隼人にときめいてるとか、完全に変態じゃねーか!?


「……あれぇ? 何か幸希、顔赤くない?」

「っ!!?」


 四つん這いになった隼人が、座っている俺にグイと近付いてきた。

 う、うおおおおおおお!?!?


「べ、別に赤くねーよ!? 赤くなる理由なんかねーだろーが!」

「んふふ~、そうかな~? ――ひょっとして幸希、女装した僕にときめいちゃってるんじゃないの~?」

「なっ!?」


 小悪魔みたいな妖しい笑みを浮かべながら、鼻と鼻が付きそうな距離まで顔を寄せてくる隼人。

 ち、近い近い近い近い……!!


「そ、そそそそそそんなわけねーじゃん!! お、俺は別に、お前のことなんて――」

「そっかー。……僕は好きだけどな、幸希のこと」

「――!?!?」


 えっ!?!?

 い、今、何と!?!?


「――僕ね、実は子どもの頃からずっと、幸希のこと好きだったんだよ」

「――!!」


 ……は、隼人。


「もちろん今のは恋愛対象としてって意味だよ」

「あ、あのその、えーっと」


 いつになく真剣な瞳で見つめてくる隼人。

 あわわわわわわわ。

 もうマジでヤバい……!

 今にも心臓が爆発しそうだ……!


「ねえ、幸希は僕のこと、どう思ってるの?」

「ひゃうっ!?」


 隼人の細い指がそっと俺の頬を撫でる。

 あ、あぁ……。


「……お、俺、も……」


 ――もうダメだ。


「うん、俺も、何?」

「俺、も――隼人のことが、好き、だ」


 ああ、言っちまった――。


「ふふ、ありがと。これで僕たち両想いだね」

「はぅ……!」


 隼人によしよしと頭を撫でられる。

 一度も経験したことないレベルの多幸感が全身を駆け巡った。


「まったく、幸希ったら普段は男っぽい喋り方なのにそんなとろんとした顔して。やっぱり女の子なんだね」

「う、うるせぇ、な」


 ああでも、幸せすぎて身体に力が入らない。


「――幸希」

「ふえ? ――んふぅ!」


 その時だった。

 不意に俺の唇が、隼人の唇で塞がれた。

 んんんんんんんん……!!


「んぅ……、こうき……、んっ、すきだよ、こうき……んっ」

「ふあぁ……、んぁっ、はや、と……、んんっ」


 俺の口腔が隼人の舌で蹂躙される。

 いつものオドオドした隼人からは想像できないくらい、獣みたいに荒々しいキスだった。


「ハァ……、ハァ……」

「はぁ……、はぁ……、はふぅ……」


 糸を引いた隼人の舌が、俺の口腔なかから引き出される。

 その光景はとても艶っぽく、イヤラしかった。

 頭の中が真っ白で、もう何も考えられない……。


「――ふふ、ねえ幸希」

「ふえ?」


 その瞬間、隼人の瞳が獲物を狩る直前の猛禽類みたいに、鋭く光った。


「僕はこんなに恥ずかしい思いをしたんだから――次は幸希に恥ずかしくなってもらうよ」

「っ!?!?」


 そ、それ、って……。


「――幸希、愛してるよ」

「は、はや、と……!?」


 そのまま隼人が俺を押し倒してきて――。


 あーーーーーーーれーーーーーーーーー。


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罰ゲームで幼馴染を女装させたら、滅茶苦茶可愛くなったんだが!? 間咲正樹 @masaki69masaki

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