風船、ぷくーっ!
夕凪あゆ
第1話
君が誰かの名前を出すたびに、
チクって心に傷がついて、
でもそんなの気にしたくなくて、
私の頬は風船みたいに、
「ぷくー」って。
笑いながら誤魔化すけれど、
その風船には君への言葉が詰まってるんだよ。
君がその人の話をするときの目、
ちょっと違うんだよね。
私、君のこといっぱい見てるから。
誰よりも君の動作には敏感だからさ。
ずるいよって。思いながらも言えない。
溢れかけた気持ちを慌てて押し込んで、
風船ぷくーっ。
わたしは笑う。みんなの賑やかしでいたいもん。
誰にも興味を持たれない、影のような存在より、
道化の方を私は望む。
今日も気づいていないふりで。
でも、指先が冷たくなる。
飲みかけのココアはぬるくなって、
溶けきれなかった甘さだけが
舌に残る。
「別にいいよ」って思おうとする。
君が誰を見て笑っても、
わたしにはわたしの居場所があるはずだって。
でも、ほんとは怖い。
少しずつ、
わたしの中の君が削れていくみたいで。
そういう時は、萎むんじゃない?
私の中の風船が。
頬をふくらませて、ぷくーってしても、
誰もその中を覗かないじゃん。
中にはちゃんと
君への言葉が詰まってるのに。
君が笑うたび、
袋の中の空気が震える。心だって揺れる。
風船は少しずつ歪んで、破裂するのを恐れて、
また小さく息を吐く。
好きって感情は別に、甘いだけではないじゃん。
苦しい、痛い、少しのスパイスがあるからこそ。
飽きずに誰かを見ていられるもんじゃないの?
だからって君に他の人のこと見てほしくはないけど。
別に君が他の誰かに振り向いても。
心がボロボロに打ち砕かれても、
結局私は、君の隣で息をしていたい。
心の奥では、ずっと君を呼んでる。
私の中の風船が消えてなくなり萎む時、
その時私は幸せだろうな。
思いをすべて吐き出せて。
その上で受け止めてくれたらどれ程良いことか。
まあ実際は、好きすぎるからさ。
萎む勢いを知らないかも。
まあとにかく、ここで言わせて。
好きだよって思いでいっぱいなの。
でも君には伝えられないね。
やるせなさで、
風船ぷくーっ、。
風船、ぷくーっ! 夕凪あゆ @Ayu1030
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