第十一章:真実の告白と、ほどけた呪縛

​――遥斗 side――

​カフェから近い、俺の部屋で半年ぶりに静かに向き合った。

​再会の喜びで抱きしめた熱が、少しずつ冷めていく。だが、それが理性を呼び戻した。

​俺は、淹れたてのコーヒーを桜の前に置き、深く息を吸った。


​「……桜ちゃん。半年間、お疲れさま。会ってくれてありがとう」

​「話したいことがあるって、言ったでしょ」


​桜の目は真っ直ぐで、俺の「逃げ」を許さない、強い光を宿していた。


​「ああ、そうだな。自分勝手だし、今更かもしれないけど俺の気持ちを伝えたいんだ……」


​俺は、美佳との過去について語り始めた。高校生だった桜を、曖昧な関係に引きずり込むことを恐れたこと。美佳との関係を清算する前に君を受け入れる資格がないと、自分を呪縛していたこと。

​そして…

​「あの夜、君と距離を置こうとしたのは、俺が、君のことを、ずっと好きだったからだ。だから、勢いだけで曖昧な状態にしてまた君を傷つけてしまったらって思うと怖かったんだ。」


​――桜 side――

​彼の告白を聞いている間、私の目からは自然と涙が溢れていた。知らなかった。あの時の彼の行動が、彼なりの愛の責任だったなんて。


​「……美佳さんのことは、もういいんですか?」

​「ああ。2~3年前に、美佳に会って、ちゃんとけじめつけた。だからあの夜は美佳とのことで君と距離を置こうとしたわけじゃないからな。」

​「……私に、話してくれればよかったのに」

​「話せなかった。自分勝手な想いで距離を置こうとして、しかも、何回も君を傷つけたから。」


​遥斗さんは、立ち上がり、半年前に私が残した手紙を、財布から取り出した。


​「桜ちゃん。俺は、君がこの半年頑張り続けていたのをしってる。だから、俺も店長として、一人の男として自分なりに頑張ってきた。もう遅いかもしれないけど……」


​彼は、手紙を静かにテーブルに置いた。


​「少しでもまだ気持ちが残ってたら桜の時間を俺にくれないかな?」


​遥斗さんは、私の手を取った。彼の温もりが、心の奥深くに残っていた5年間の傷と、半年の距離を埋めていく。


​「今度は逃げないでね」


私の頬を伝う涙は、安堵と切望の色を帯びていた。


​「おかえり、桜。これからは、俺の隣にいて」


​涙で曇った視界の中で、私は確かに頷いた。


​「ただいま、遥斗さん」

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