ちょっと不穏な日常SS

朽木

第1話 レンチン


リビングの机の上に今日のカレーがあった。ラップがかかったままのお皿をレンジに入れて5分加熱する。待っている間にランドセルを置いて、手を洗って、スプーンを用意する。ワクワクして待っていると軽快な音がリビングに響く。電子レンジの扉を開けるとおいしそうな匂いが出てきた。アツアツのお皿が痛いと思いながら机の上に運ぶ。電子レンジって便利だな、すぐにあったかくなるんだもん。


「お母さんとお父さんのなかもあったかくならないかな」


電子レンジに入れるには大きいから無理かな。

三人でご飯食べたかったな。


「ね、お父さん。」


リビングの床に転がるお父さんを見つめる。もう冷たい。死んでいる。


お母さんはお父さんを包丁で刺しちゃった。それで昨日からどっかに行っちゃった。


今日でお父さんの分のカレーも食べちゃったし、明日からどうしよう。


お父さんをあったかくしたら生き返るかな?そしたらお母さん戻ってくるかな?でもどうしよう、お父さん大きいし電子レンジに入らないや。


お皿の上のカレーを見る。大きめにカットされたジャガイモにすりつぶされた人参、とろとろの玉ねぎと、お肉。


包丁はキッチンにある。いつもは入っちゃだめだけど、お母さん見てないしいいかな。

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