夢なら覚めて、覚めないで。
- ★★★ Excellent!!!
「許して、ぼくはこれより大きな声ではしゃべれない」
この作品を読んだ後に、ふと脳裏に浮かんだのはこの台詞だった。
どちらかと言えばこの夢は、主人公にとっては悪夢だったのかもしれない。
本作の魅力は、主人公である推理作家・飯田太朗の著作から起きていく見立て殺人。なんとこの作品がまず同シリーズの中で読めてしまうので、気になった方はこの作中作を追っていくとトリックも楽しめるという二重構造。
そしてその謎を追い、著作とそれをセレクトしていく連続殺人鬼との対決——。
クセあり刑事とのやりとりも軽快で、その中でも作品を見立てて人が殺されていくという事態に追い詰められていく飯田先生。その魔の手は彼の担当にも伸びて……。
それぞれの殺人に共通するのは「飯田太朗の作品を模倣している」それだけ。異常に飯田先生に執着しているように感じられる犯人、その目的は一体?
そして犯人を追うたびに明かされていく飯田太朗の過去と、その心の内。
ゾワゾワしたものを背中に感じつつも、ワクワクして次のページにと進んでしまう手腕にはあっぱれの一言。
夢の中に引き摺り込まれるような、けれど出口を探す飯田先生と、相対する犯人の思惑。
この夢から覚めたとき、アナタはなんと言うだろうか。
後に残る静寂のような余韻まで、しっかり楽しめる作品です。