静かで熱い、その狂気の謎を追え!
- ★★★ Excellent!!!
いきなりですが、シリーズ未読の初心者がレビューを一言でまとめます──面白い!!!!
何もわかってない初心者のくせになにを言ってやがる、と先輩読者様方には怒られるかもしれません。けれど私は敢えてそこを推したい。知らなくてもこのシリーズ最新作、めちゃくちゃ読めちゃうんです──と。
クールでちょっと偏屈なミステリ作家の『飯田太朗』先生は、冒頭からひどく不機嫌。どうやら自分のこれまでの作品で登場した内容を模した連続殺人事件が起こっているとのこと。犯人は相当にディープな先生のファンのようで、なかなか尻尾を出さない。挑発するような犯行声明に、ついには先生の身近な人にも被害が……!
現実的にも精神的にもどんどん追い詰められていく飯田先生。けれどへこたれている時間はない。次の悲劇が起こる前に何か掴まなければ──。そんな彼の手は各作品のこと、関わった人たち、そして今は遠いところに行ってしまったかつての大切な人たちとの思い出へと伸びていく。
血生臭い事件の真っ只中にいながらも、随所に差し込まれる学生時代の情景描写が見事です。甘酸っぱく、苦く、そして二度と戻らない、美しい青春の日々。ひとよりも少し失ったものが多いからか先生の記憶は鮮烈で、泣きたくなるような懐かしささえ覚えるほど。かと思えば現在のオトナな描写も雰囲気たっぷりで濃厚。このギャップの筆力よ……!
逃げるような、それでいて自分の元へ辿り着く日を心待ちにしているかのような犯人。その正体と動機を知った時、読み手それぞれに深く感じることがきっとあるはず。
けれど『夢見てくれてありがとう』──謎めいたタイトルが本当の意味で回収される瞬間は皆、同じなんじゃないかと思います。いやあもう。お見事、としか。
作者さんの従来作品のファンはもちろん、初見や別作品を知ってるという方にも隔たりなくおすすめ。この時期に読まなきゃもったいないですよ!