アックスマン・リンゴ
くだものは落とすもの、くだものは落とすもの––––––––
「なに考えてんだ?」
アックスマンのリンゴが勇者のスイカに気軽に問いかけた。
空は青々と晴れていおり生きとし生きるものが呑み込まれてしまうほどである。
光合成をするにはいい日光加減だろう。
「・・・・・・いや、なんでもない」
スイカは崖の下をチラッと見た。
「にしてもよ〜このオレ様に声をかけないなんて酷くない?」
リンゴはグイグイとスイカに詰め寄る。
決して脅しているからではない。愛情表現だ。
しかしこれではゲイと思われてしまうではないか。
「離れろよ」
「へ?」
「離れろよ。気色悪い。それから––––––––キモイ!」
スイカはキッパリと言った。
「パッカァァァァァン」
リンゴがショックのあまりに割れてしまった。
果肉を超え雲を超えて天を駆けて宇宙が見える。
ジューシーな果汁が少し滲み出る。
「フン、まだ収穫時期じゃあなかったね。それともなんだい。虫食いだったかなアハハハハハハ」
モヤモヤモヤとそんな妄想を膨らませる勇者スイカだった。
「フッ」
「なにがおかしいんだよ、スイカ」
「まだ収穫時期じゃあなかったって話だよ」
ニヤリとスイカは笑った。
割れろ。割れろ。真っ二つに割れちまえ!
青藍の空では水烏が飛んでいる。
水烏とは全身が水でできた烏のことなのだ。
「大好きだ!」
リンゴは抱きついてきた。
ちなみにリンゴはアックスマンである。
「・・・・・・へ?」
スイカは予想していなかった事に慄く。
「へへっ、お前はオレの心配をしてくれたんだな」
きつく抱きしめてくる。
なんどでも言おう。リンゴはアックスマンで豪傑な男だ。
「ウエェェェェェ」
言葉には出さずともスイカは苦渋の思いでいた。
「お前は覚えているかは知らねえがオレはいつでも思い出せる。アレはまだオレが青かった時のこと・・・・・・」
リンゴは昔話をしようとしている。
つまらなくなりそうだ。
旅には妄想が必要不可欠。
本当なら旅はひとりで出て王女との愛の夢幻コラボレーションを楽しもうと紅い果汁をフリフリさせていたのに。
それをリンゴ達は台無しにしたのである。
「オレは青かった。いつもみんなと同じ。そんな中で虫に食われそうになった時によぉ・・・・・・」
リンゴはだらだら喋っている。
恐らくリンゴパラダイスにいた時の話をしているのだ。
スイカはその時すでに独り立ちしていた。
なぜかは今は語るには面倒くさい奴がいるので難儀な部分があるのだか少しだけ主人公として勇者スイカのことを話そう。
「殺虫剤をかけられそうになった時は涙が出そうになったぜ・・・・・・」
まだまだリンゴは語っている。
それよりも勇者スイカだ。
彼はまわりよりひどく種が多かった。
それ以上でもそれ以下でもない。
他と比べると黒い面積が広いのだ。
「スイカ、お前はオレを群青って呼んでくれたよな!緑でも青でもない。群青だ‼︎」
アックスマンのリンゴの話はまだまだ続きそうだ。
割れちまえ。
勇者スイカは思った。
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