第14話
翠蓮は、家に帰り長椅子に横になり、大きくため息をついた。そして翠蓮は、自分の服に隠していた首飾りを取り出した。それには、大きな黒水晶が埋め込まれておりその周りの縁に紫水晶を小さく散りばめられているものである。それは翠蓮の母方の家が代々受け継いで来た物だ。これには、魔除け、厄除けの作用があるらしい。翠蓮がそれを見つめていると心配した雨月が念話で声をかける。
『大丈夫…?』
『あぁ。ただ、少し驚いて疲れただけだ』
『そう、外に出ていい?』
『あ、わりぃ。忘れてた』
翠蓮はそう言いながら、急いで雨月が自由に出られるようにした。すると外に出てきた雨月が台所へと歩いて行き、冷蔵庫を開けて料理をし始めた。
―――あいつ、飯作れんのか?
翠蓮はそう考えながら雨月がいるであろう台所からいい匂いがしたため大丈夫だろうと考え長椅子に横たわる。
そして数分後、雨月の声で目を覚ました。翠蓮はゆっくりと体を起こしながら周りを見渡し回らない頭で雨月に問う。
「…俺、寝てたのか?」
「うん、ぐっすり寝てたよ」
「そうか、すまんな。飯作ってくれたのに俺は手伝えずに寝てて…」
「気にしないでよ!慣れないことしたら疲れるからね。ご飯食べたら早めに休んだ方が良いよ」
雨月はそう言い翠蓮にご飯を食べるように促す。だが、雨月の内心は緊張していた。なぜなら、初めて他者に自分が作った食事を食べてもらおうとしているのだから。翠蓮はその言葉に素直に従い、食事を口に運ぶ。すると、翠蓮は驚きで目を見開きながら「え、うま」と言いながら食べ進める。翠蓮は食べ終えて口を手拭いで拭きながら、雨月に礼を言う。
「ありがとな。飯がこんなに美味しいと思ったのは久しぶりだ」
「口に合ったようで何よりだよ」
「しっかし、この料理の作り方をどうやって覚えたんだ?」
「あぁ、それはね?何十年か前に君と同じくらいの女の子の陰陽師に会って、お腹を空かせてた俺に沢山料理の作り方を教えてくれて食べさせてくれたんだ。確か、君と同じ首飾りをしてたよ」
雨月の言葉に翠蓮は、強く納得した。翠蓮は、幼い頃から母に
『妖怪にもいい奴が居る。人間と同じだよ。だから、悪い妖怪と良い妖怪を見分けられるようになって初めて一人前の陰陽師なんだよ』
と耳にたこが出来るくらいに言われていたことを思い出した。そして翠蓮が食べていた食事にはしっかりと母の味が感じられていたのだから。そんな翠蓮の雰囲気を察した雨月は、嬉しそうに微笑む。
「そっか、やっぱり彼女は君のお母さんだったんだね。俺は君達親子に救われたんだね。ありがとう」
「まぁ、母さんも当たり前のことをしただけだと言うだろうな」
「ふふっ、本当に親子だね」
「……そうかよ。俺も当たり前のことをしただけだ。別に、礼を言われることはしてねぇ」
翠蓮は、ぶっきらぼうにそう言う。だが、よく見て見ると翠蓮がいつもより機嫌が良かった。翠蓮は、台所で自分と雨月が使っていた食器を洗っていた。そして、翠蓮は夜になるまで居間でのんびりとしていた。雨月は楽しそうに自分のふかふかで、もふもふの耳の手入れをしている。一方、翠蓮は二振りの刀の手入れをしていた。その表情は真剣そのものである。そんな翠蓮を見て恐る恐る声をかけた。
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