第12話
そして翠蓮は風呂を入り終え、自室に戻り押し入れにあった掛け布団を取り出した物を使い眠った。
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翌朝、翠蓮は目を覚ました。その時間は丑三つ時であった。一般的にその時間は妖怪の動きが活発になるため陰陽師でも…いや、陰陽師であれば尚更外に出たがらないであろう。だが、翠蓮は朝の身支度を整えて部屋を出た。そして庭で翠蓮は準備体操を終え、自分の刀を手に取り素振りをしていた。頭の中で敵を思い浮かべて、自分がどう立ち回るかを熟考を重ねながら刀を振う。するとほんの微かに夜が明けていた。それを見た翠蓮は刀を鞘に仕舞い、家に入ってすぐに風呂に入った。風呂から上がり服を着て自室に入る。そして翠蓮は、その場に胡座をかき、座りながら坐禅を組み…瞑想をした。霊力を安定させて霊力操作の制度をより一層上げていっているのだ。そうしていると、朝日が顔を出していた。それを確認した翠蓮は、すぐ様。台所へと向かい慣れた手付きで朝食を作った。すると朝食の匂いに誘われたであろう雨月が顔を覗かせていたのだ。隠れているが、耳と尻尾、そして頭と九尾としての手足が丸見えだった。どうやら、雨月は朝が弱くそのせいで人間に化けることが難しいのだろう。
―――こいつにも弱点はあるんだな。
翠蓮はそう、ぼんやりと考えながら出来た食事を運ぶ。
「ほら、腹減ったんならこれ食え」
と言いながら翠蓮は、雨月が好きそうな物を居間の机に置いた。すると雨月は嬉しそうに食事にがっつく。だが、翠蓮側の机には昨日の稲荷寿司の残りが置かれていた。それを見た雨月は首を傾げながら翠蓮に問う。
「それだけで足りるの?今日の試験あるんでしょ。時間は確か…えっと、何時だっけ?」
「8時からだ。あと、俺は朝はあまり食べられないから平気だ」
「あ、そうだった!忘れてたよー」
「お前、俺の式神だろー?」
翠蓮は軽い口調で言いながら、稲荷寿司を食べていた。すると雨月は食事を食べながら口を開く。
「だって、君が苦戦する姿を想像できないもん。実力を隠すにしてもさー?」
「はぁ、だからお前は俺のことを買い被りすぎなんだよ。俺は平均的な陰陽師の中で少し強いだけだ」
と言いながら翠蓮は、残った稲荷寿司を口に放り込み食器を片付ける。そんな翠蓮の言葉に雨月は、苦笑する。
―――面白いなぁ、君は。
と考えながらも雨月は翠蓮が本気で戦う姿を見たいと言う気持ちが雨月の心を埋め尽くしていた。それと同時にどうしたら、翠蓮が本気を出すのかと考えながらほくそ笑む。そんな雨月の企みを知らない翠蓮は、雨月の表情でなにか企んでいると察して微かに警戒しながら雨月が食事を終えた食器も洗い食器棚に片付けた。そして翠蓮と雨月は、家を出る時間になるまでのんびりと雑談をする。
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