第7話
そして妖怪を葬った雨月は、翠蓮の顔を覗き込みながら口を開く。
「どうだった?俺、すごかった?」
「あぁ、凄かったぞ。おつかれ…ご褒美に稲荷寿司でも作ってやるよ」
「稲荷寿司。食べたことないかも」
「食ったら分かるだろ。ほら、さっさと行くぞ。これでここには未練ねぇだろ?」
と言いながら翠蓮はスタスタと歩いていく。それを追うように翠蓮の隣りまで追いつき、雨月は翠蓮と共に歩いた。その雨月の表情は晴れやかなものである。どうやら雨月はここの妖怪にぞんざいな扱いを受けていたのだろう。
―――良かったな
翠蓮はそんな雨月を見ながらそう考えながら雨月と話しながら家へと戻る。
そして、翠蓮と雨月は翠蓮の家に戻った。雨月は物珍しそうに家の中を見渡しながら、そのまま家に上がった。すると雨月は翠蓮の靴を初めて見る目で見ていた。雨月の尻尾を見ると、好奇心で靴をつんつんと触れていた。そんなこと姿を見て翠蓮は思わず、笑いを堪えた。
―――おもろすぎだろ、こいつ
と翠蓮はそう思いながら、雨月に家にある物の用途や使い方を教えていった。雨月は真剣な面持ちでそれらを覚えようと頑張っていた。そんな雨月を微笑ましそうに見ながら台所へ向かおうとする。するとそんな翠蓮の思いの外、雨月は覚えが早く、翠蓮が教えたことをドンドンと記憶していった。そんな雨月に少々驚きながら、買ってきた物を整理する翠蓮。すると、雨月がテクテクと翠蓮のいる台所に来た。どうやら油揚げの匂いに釣られて来たらしい雨月は油揚げを食べたそうに見つめていた。その姿は、ご飯を待ちきれない幼子のよう。
―――こいつ、意外と子供っぽいんだな。俺の母さんもこんな気持ちで俺達のことを見てたんだろうな。
と翠蓮は思考しながら雨月に声をかける。
「10切れくらいなら食っていいぞ。多めに買ったからな」
と言いながら翠蓮は皿に油揚げを10切れを乗せて雨月に渡した。すると雨月は嬉しそうに手で食べ始めた。
―――教え甲斐がありそうだな。
雨月の食べる姿を見て翠蓮はそう考えてほくそ笑む。そんな翠蓮の思惑を知らない雨月は嬉しそうに油揚げを食んでいた。そして雨月がそれを食べ終えると翠蓮に声をかけようとしていた。その様子を見た翠蓮は油揚げのおかわりだと思っていたのだが、そんな考えとは裏腹に雨月は
「油揚げありがとう。稲荷寿司を作るんだよね?俺に何かできることはあるかな?」
「え、あぁ。それなら……」
翠蓮は雨月の予想外の言葉に驚きながら雨月に出来そうなことを頼んだ。そうして出来たいなり寿司を見た雨月は目を輝かせながら、今にも食べようともせんばかりの様子で居間の机に運ぶ。そんな雨月を微笑ましそうに見ながら翠蓮は、飲み物を運ぶ。
―――やっぱり、一人より誰かがいた方がこの家は生き生きしてそうだな。
と考えながら翠蓮は居間へと向かうと雨月は稲荷寿司を机に置き座らずに待っていた。
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