第6話

「バレた?あははっ!君が罪のない妖怪を祓う訳ないって知ってるよ。僕だってそれで救われたんだからさ」

 

「………あの時か」

 

「そう!僕が仲間に裏切られて殺されかけた時に君が助けてくれた。それで、僕は人間に優しく出来るようになったんだよ?全部、君のお陰で今の僕が居るんだよ」

 

「……別に、俺はそこら辺にいた悪い妖怪を祓ったついでにお前の怪我を治しただけだ。任務通りにしただけだし、零に頼まれたからしただけだからな」

 

 翠蓮はそう言い、雨月から目をそらす。その言葉に雨月はそんな翠蓮を揶揄うような声色で口を開く。

 

「そんなこと言ってぇ、が人を襲うまで守るように結界が貼られてたの知ってるんだよ?その結界に助けられたことだってあるんだから。それも零くんに言われたの?言われてないよね?」

 

「……気づいてたか」

 

「あぁ、気づいてたさ。まぁ…そのことに気づいたのはあれから結構あとだけどね。……まさか、それも零くんに言われてとか言うつもりじゃないよね?」

 

「はぁ、流石にそこまで知られてるなら言い逃れ出来ねえよ」

 

 翠蓮はそう言いながら自嘲気味に肩をすくめ、苦笑する。そんな翠蓮を見て、雨月は

 「君の判断が早い所、俺は好きだよ?」

と、言いながら揶揄うように翠蓮の周りを回るように飛んでいた。その刹那、雨月が『俺』と何回か言った刹那、先程まで雨月を怖がっていた妖怪達が急に殺気立ち今にも襲い掛かろうとしていた。翠蓮はそれを察してため息をつきながら鞘に入れてある刀の柄に手をかけて雨月に声をかける。

 

「お前、一人称が前のに戻ってんぞ?」

 

「……え、ほんと?無意識だったよ」

 

 と言いながら苦笑する雨月。その刹那、妖怪が雨月に攻撃を仕掛ける。雨月は反応が遅れたが、雨月を守るように翠蓮は妖怪の攻撃を軽く受け止め、刀で妖怪を一刀両断し、祓う。

―――まさか、本当にこいつ雨月が俺と言った瞬間襲おうとするとは

 と考えながら刀に付着した血を振り落とし刀を鞘に戻しながら翠蓮はため息混じりで雨月に話しかける。

 

「別に、一人称くらい自由にしろよ。それを否定するような奴らはぶっ飛ばせばいい。俺が文句を言わせない」

 

「蓮くん…」

 

 翠蓮は察していたのだ。雨月が仲間に裏切られた時に、元仲間から

「俺だなんて品がなさすぎる。その上、自分からはあんなに美味しい人間の血肉を喰らおうとも襲おうともしない。こんなのが同じ妖怪だなんて気味が悪い」

 と言う理由で雨月は殺されそうになっていたことを。雨月は無言で飛ぶのをやめて翠蓮の隣りに並び、心底嬉しそうな微笑みをしながら口を開く。

 

「君にそう言われると、説得力があるよ。なんせ、それを行動で示してくれたからね」

 

 と言いながら雨月は上機嫌に軽やかに歩きながら残りの妖怪を狐火で一層した。だが、それは木に当たることはなく狐火が木の間を通り抜けるように妖怪たちを襲う。その姿は、妖艶であり…冷酷で残酷な表情をしていた。翠蓮はそんな雨月の報復を黙って見守る。

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