第5話
「良いんじゃない?君が面倒だと思う奴らは全員ぶっ飛ばしたら良いじゃない。僕がいつでもするよ?」
そう言い雨月は当たり前のように言ってのけた。雨月は翠蓮以外のことにはあまり興味がないのだろう。
そんな雨月に翠蓮は笑いを堪えずに苦笑する。
「お前、そういう所はちゃんと妖怪なのな」
「脳筋って言いたいのかな?」
「よく分かってんじゃねぇか」
「蓮くん??」
雨月はそう言う表情と声色は優しいものながらも極めて圧のある物であった。その圧は、例え…1級陰陽師でも冷や汗が出て、その場に立つことさえ叶わない程に。それを目の前にしても、翠蓮は物ともせずにあまつさえ…雨月の額に軽くデコピンをしながら悪戯っぽく笑う。
「冗談だよ。脳筋じゃなくて、妖怪としての考え方もあるんだなって思っただけだ」
「それって、妖怪らしくないって言いたいの?」
「ふむ、そう聞かれると答えづらいな。お前は、他の妖怪とは格が違うだろ?だからそういう意味では妖怪らしくないと思ってるし」
「………なにそれ」
雨月はそんな翠蓮の言葉を聞き噴き出し笑った。
―――全く、君には敵わないや。
雨月はそう考えながら今もなお大笑いしている翠蓮を優しい眼差しで見つめていた。まるで面白いものを見るかのような表情で。するとその視線に気づいた翠蓮が小首を傾げながら雨月を見た。
「何だよ?何か面白いものでも見つけたか?」
「君ほど面白い人間は居ないよ」
「はっ、何だそりゃ?」
そう言い、翠蓮は拍子抜けするような表情をしながら妖力で飛ぶ雨月を見る。雨月は、何処か翠蓮を挑発するように口を開く。その表情は、面白そうなおもちゃを見つけた幼子のように無邪気な表情をしていた。そんな雨月の様子を見ていた他の妖怪達は、翠蓮達に奇襲をすることを断念することにした。今、あの二人の邪魔するということはどれ程の手痛い報復が返って来るか分からない為だろう。一目散に散り散りとなって逃げていく妖怪を見て翠蓮は苦笑しながら雨月の肩に己の腕を絡ませて、挑発気味に話しかける。
「お前、ここで随分と幅を利かせてるみたいじゃねぇか?さては、俺に手加減してやがったのか?」
「えぇー?そんなわけ無いじゃないか。僕、途中から君を殺す気でやってたんだよ?」
「確かにそうだな。でも、本気ではしてないのは分かってたし。お互い様だよな」
「やっぱり、君も本気じゃなかったんだ。安心したよ。祓われるかと思ったもーん」
と言いながら雨月は朗らかに笑う。その表情は、そんなこと一切考えていないと言わんばかりだった。
―――思ってもいねぇくせに
翠蓮はそう思いながらもそれを敢えて言わない。だが、顔にはわざと出す。するとそれが伝わったのか雨月は悪戯をしたことがバレたか幼子のような表情をしながら翠蓮に話しかける。
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