第3話 親友
昼、いつもの屋上でくつろいでいると、隆一が急いで駆け上がって来た。
「智香!聞いてくれ!」
「…ん?」
隆一はまたパンをいくつか購入し、コンビニ袋はパンだけにパンパンだった。
そして隆一が智香に話したくて仕方なさそうな話を食べながら聞く事になった。
***
「隆いっち!カラオケ行こーぜ!」
「ダメだ、期末テスト近いからな!」
「えー!そんな優等生みたいな事言うなよ!」
「俺優等生だし!そしてセレブでイケメンな!」
隆一に親しげに話しかけているのは櫻井昌平(サクライ・ショウヘイ)。隆一の親友だ。
彼は金髪でピアスもしていて優等生の隆一とは正反対のタイプだが、隆一としてはそれが逆にいいらしい。
「隆いっち…俺とうとうわかっちゃったんだよね…。」
「ん?何をだよ?」
隆一が尋ねると、昌平は不気味に笑い、もったいぶりながら言った。
「コンビニのナナちゃん!俺らとタメらしいんだ!しかも同じ学園だったみたいでさ!」
隆一はガクッとコケると、昌平は不思議そうに目を丸くした。
「あれ?ビックニュースじゃね!?」
「あぁそうだな…ただしお前にとってのな」
「なぁなぁ!ナナちゃんに会いたいからコンビニよろーぜ!」
楽しそうに話す昌平に、隆一は仕方なく首を縦に振った。
道中、ナナちゃんについて少し疑問に思い、隆一はそれを昌平に聞いてみる事にした。
「そう言えばそのナナちゃんて昼間のコンビニでもよくレジにいるけどいつ学校行ってるんだ?」
隆一のその問いに、昌平は「ふっふっふ!」と含み笑いすると、待っていたように得意げに言った。
「ナナちゃんはどうやら、定時制に通ってるらしいんだ!昼は働いて夜だよ夜!働き者だよな…!」
「そっ…そうか」
ちょっと引き気味に隆一はそう言うと、二人はコンビニにたどり着いた。
***
「…この内容の何が聞いて欲しい事なんだ?ナナちゃんって人のウワサ話だけじゃないか」
…しかもそのナナちゃん、総長だし。
智香はそう思い苦笑しながら隆一を見た。
「まぁ待て、本題はここからだ智香」
隆一はそう言うと、ドカンとその場に座り再び語り出した。
***
「ナナちゃーん!」
昌平がそう言いながら店に入ると、見るからに極悪そうな少女のポスターが店に貼られていた。
「えっ!?何コレ!?」
店に入って一言目にそう言うと、昌平はポスターの前で何とも言えない顔をしている奈々と皐月を見た。
「どっ…どうしたんすかコレ?」
昌平がそう尋ねると、困った様な顔をしている二人は顔を見合わせ、皐月が答えた。
「私の前職の上司が勝手に貼って行ったのよ。『この女が見つかるまで暫くここに貼らせてもらう』って…。」
…智香が前話していた奴か。という事はこの絵は智香…。
隆一がそう思っていると、昌平が思い出したかの様に言った。
「これ隆一が屋上でいつもダベってる人にそっくりだな!」
…チッ…気づかれたか。
隆一はそう思いながらも、さも素知らぬ顔で言った。
「そうか?こんな凶悪犯みたいな知り合い居ねーけど?」
こんな対応をしたのには訳がある。
実は昌平は奈々に対する反応を見ての通りかなりの女好きで、隆一は智香と引き合わせるのを渋っていた。
「うーん…似てると思うんだけどなー。」
「もう全然!似てねー似てねー。」
…セーフ!
そう隆一は思いながら心の中でガッツポーズをした。
そんなやり取りをしていた二人を、奈々は傍観していた。
…屋上で智香がいつもダベってるって言ってたのはこの男か。どう見ても智香だろコレ、どういう会話してんだ?まぁいいが。
そう思いながら奈々は営業を優先した。
「お客様、何か買われますか?」
「あっ!俺ねーおでんの卵と大根と…。」
昌平が注文を始めると、隆一も一安心し胸を撫で下ろした。
***
「おい、どうでもいい話なんだが?急いで話に来る必要あるかそれ?」
智香がそう言うと、隆一は手を伸ばしスマホ画面を智香に見せた。
その画像を見た智香も、流石に腰を抜かしそうになった。
そこには校舎をぐるりと一周して貼られている、智香だと思われる凶悪犯に見えるポスターが写っていた。
「あのオバさんいつ貼ったの!?朝学校に来たとき無かったっしょ!?」
智香がそう驚くと、隆一は更に校舎の中の写真も見せた。
「中にも貼られてたぜ。先生達も驚いてたよ」
「変な所で本気になってんなあのオバさん!でもここまで嫌がらせされると清々しくもあるな!」
そう言って全く気にした様子も無く智香は笑った。
「コレを伝えに走って来たのか?別にいいのに!ご苦労様!」
「こんな面白い事滅多に無いからな!もう学校中誰の仕業か大騒ぎだぜ!」
二人はゲラゲラと笑うと、隆一の買って来たパンを食べ始めた。
「ポスター貼られた本人としては剥がす気とかはあんの?」
「無いよ!こんな大量のポスター、1人じゃムリムリ!」
そう言ってメロンパンを食べる智香を見ながら、隆一は頬杖をついた。
…言ってくれれば一緒に剥がすんだがな。
「どうした?食べないのか?」
智香がそう言うと、隆一はやきそばパンを頬張った。
穏やかな昼休みの出来事だった。
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