46.ゴザルの戦慄
「いーーやーーでーーごーーざーー!!」
「黙って歩きなさい。まだ入口ですよ何止まってるんですか」
金髪に武者っぽい装備を付け、帯刀している剣士【ゴザル】が叫ぶ声が前線に響き渡る。
ゴザルは終戦期なのに前線に連れて来られていた。場所はランド平原。アミューの卵が孵化した場所だ。強制連行させている人物はもちろん…
「姉御ぉーー!!拙者はこんなところで命を捨てたくないでござーーる!!」
「ベルゼルガに挑もうって人が情けないこと言ってるんじゃないです。それに今私から離れたら死にますよ?ほら、私を肩車しなさい。それが一番安全です」
姉御だった。銀髪にピンクの少しかかった髪、異常な程に小さな子供の姿。青いマフラーを靡かせただの子供服を着ている。
ゴザルは顔を涙でグシャグシャにしながら姉御を持ち上げ肩車した。
「ううっ…なんでこんなことに…ござる…」
「あなたは私の用事のためのパシりです。私を目的地まで運びなさい。ついでにベルゼルガ以上の兵器がわんさかいるところに連れて行って慣れさせようという私の優しさですよ」
「厳しさしかないでござる…後なんで敬語なんでござるか姉御…」
「外行きの姿です」
ゴザルは項垂れたままランド平原に突入した…
瞬間に辺りが白い光に包まれる。
「ござっ!!」
周囲が光り続けるが何も変化がない。そのまま姉御に言われた通りに歩く。
そして少し経つと光が消えた。ゴザルの周囲は焼け焦げて、真っ黒になっていた。あまりの光景にゴザルの足も止まる。
「相変わらず派手な歓迎ですねぇ。止まってないで進みなさい」
「拙者何をされたでござるか今!」
「ただ衛星砲がぶっぱされただけです。気にしないでください」
「衛星砲ってなんでござるか!明らかヤバいでござーーーー!!!!」
今度は地面の下から刺々しい姿をした、筋骨隆々の大きさ3mくらいの生物兵器が出てきた。
「ああ、戦いたかったらいいですよ?どうぞ?私は気にしません」
「勝てるわけないでござる!」
「コイツもちゃんとベルゼルガよりも強いやつですのに…勿体ない」
生物兵器の体から大量の棘が発射され、ゴザルの周囲に飛んでくる。棘の周囲には強力なソニックブームが発生しており、回避しても人間如きでは一瞬で肉が弾け飛んでしまう。しかしゴザル達は無事だった。
「全く躾けられてない兵器ですねぇ〜。えいっ!」
生物兵器の右腕が捻じれ、潰れ、圧縮されていく。生物兵器の口から悲鳴のような咆哮が響く。そしてそのまま蹲ってしまった。
「…姉御?」
「さっさと先に進んでください?もっと奥の方に私の目的地があるんですから。こんなところで止まってたらいつになっても着きませんよ」
この日ゴザルはこの世の地獄を見ることになった。
【ゴザル視点】
終戦期の前線歩き初めて3日…拙者は寝ることも許されずに最前線を走らされていたでごさる…
見上げるような巨大な兵器から、奇抜な形をした兵器。不気味な姿をした兵器。どれも人間のいる世界に現れたら人類が絶滅するだろうと言われるレベルの兵器ということらしいでござる…姉御が兵器について解説してくれているけど、頭に何も入ってこないでござる。
「あー、見えてきましたね。あそこですよあそこ」
「…うへ?」
もう拙者の目は何を見ているかわからないでこざる…最後に見たのは拙者と同じ姿をした機械兵器っぽいやつと、宙に浮いてる腕が何本もある生物兵器で………ご……ざ…………………る。
【姉御視点】
まあ持った方か…ゴザルは疲労に耐えられずに地面に倒れ寝た。腕を持ち引きずりながら終戦期に毎回会うやつらの前に立つ。武者のやつがいきなり斬り掛かってきたので刀を折ってやる。
「…毎回刀を無駄にしていいんですか?」
「ボロケンダカラモンダイナイ…マダトドカヌカ…」
「今回は遅かったな。これに自身を運ばせたのか?これの気が狂ってないか心配だ」
「本当は心配してないでしょう?」
「一応本当に心配はしてるぞ?ただの人間の身でここの空気は辛いって」
武者も観音も相変わらずだな。観音は優しくゴザルを持ち上げ柔らかい肉のベッドを生成し乗せてあげた。
「じゃ、魔女も来たことだしはじめっか」
「ソウダナ」
「始めますか」
今回の戦争についての話を…
「コンカイノタタカイ…ソッチノ【ワーム】ガズルイ…ハンソクダ」
「ありゃ俺も見ててズルイなって思った。攻撃するときだけ地面から出て、ピンチになったら地面に潜って回復するんだもん」
「大型兵器もほぼ丸のみでしたよね」
今回の戦争は本当にワームの一強だった。機械兵器陣営がどんな兵器を投入しても殺しきれず、強力な兵器は飲み込まれ続けてしまっていた。
「アレジャタタカイニナラン…【禁止】ヲヨウキュウスル」
「ああ、俺も次の戦争に出すつもりはなかったよ。ただアイツ維持するにはあまりにも飯を食いすぎるんだわ…」
「あの体を維持するには相当なエネルギーが必要そうですからねぇ」
「ああ…だからといって俺が締めるのも可哀想だし」
「アレハチイサナ個ノアツマリダロ?バラシテシマエバイイ」
「しかしなぁ、かなり散らばるぞ?人間の領域まで行くことになると思うがいいのか?」
「いいんじゃないですか?多少ワチャワチャしてた方がこっちも面白そうですし」
「じゃあバラすか」
「バラシテクレルナラコッチノヘイキデモタイオウデキル。スマヌ」
「いいんだよ、一方的なのはつまらんからな」
「ソッチモナニカヨウキュウスセヨ。コチラカラダケヨウキュウスルノモワルイ」
「あー、じゃあデカいジェネレーター1個くれ。デッカイやつ動かすときに使ってるやつな」
「ワカッタ」
「私も欲しいですね!」
「キサマニハヤラン!」
………………………
そして話は終わり私は帰ることにした。
「では、また次の終戦期にお会いしましょう」
「サラバダ魔女…ツギコソハ一太刀イレル…」
「またな〜こっちもまた面白いものが産まれそうなんだ。早く戻って育てたいんだ」
私は気絶したフリをしたゴザルの腕を掴み…一瞬でゴザルと一緒に突入した前線の出口に戻る。
「起きなさいゴザル。起きてたんでしょ?私には…というか私以外にもきっとバレてましたよ」
「拙者は…何も聞いてないでござる…」
さあ、次の戦いは人間達にも頑張ってもらわないと…滅びますよ?
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