36.用意周到

【ヴィクトール視点】


1週間があっという間に過ぎ再びの休みになった俺とリビルはサインの隠れ家に訪れていた。


罠の解除をメッセージでお願いするとドアが開いてサインとアミュー?と呼ばれているダイナロイドが出てきた。


「こんちわー」

「ちわー」


あのダイナロイドは最初はあの幼女が手懐けているのかと思ったが、この男に懐いているようだ。この男も何かしら持っているということか…


「そういえば俺達の装備をお前が用意してくれてると聞いたがどんなのを用意してくれたんだ?」

「俺達の装備だと見た目1発スカベンジズってバレちゃいますからねぇ。勝手に持ち出しもできませんし」

「あれ目立つからなぁ。しっかり用意したぞ?楽しみにしとけ!」


そして隠れ家の広い、まるで工場のようなスペースに入る扉を開けるとそこに装備があった。


「さあ見てくれ!これが本日のお前らの装備だ!ふふふ、頑張って用意したぞ?俺がいつも着てる重パワーアーマーとハイエンドスウィッチングライフルだ!この武器なら使い慣れてるだろ!スカベンジズの中でも最強の武器だからな!弾もエネルギーパックもたくさん用意したぜ。この間俺もこれ使ったんだけど、使いやすくてやっぱまた欲しくなって3丁買っちまったわハッハッハッ」


サインの持ってたのはスカベンジズが特殊な条件下でしか貸与されない銃だった。

誰か俺たちの誰かをぶっ殺して手に入れたもんじゃねぇだろうなぁ。

銃に付いているナンバーを暗記して後で調べておこう。


「…ラインウォー製SW-ROS74なんてどこで買えるんだよ」

「俺の装備よりも質高くないすか…」


「えす…あんだって?このライフルそういう名前なんか…ハイエンドスウィッチングライフルってずっと呼んでたわ。あ、あとは顔を隠せるタイプのマスク型の情報収集機な。左目以外をこれでバッチリカバー。これであのヴィクトール様だと誰にもバレないぞ!」


「ああ、それも大切だな…」

「あとバッグがこれだよ?食べ物とか日用品とか予備の弾とか、後は良い物があったら拾って帰る用のカゴも入ってるの」


そしてダイナロイドが大きなバッグを両手に2つ抱えて持ってきた。


「ありがとう…ございます」


リビルも用意が思った以上にできていて少し引いている。

むしろここまで用意してくれるなんて思わないよな…


俺達は用意された装備を早速つけてみた。

重パワーアーマーのサイズが自動で調整され体にフィットしていく。歩いたり軽く跳ねたりしても動作に違和感はなさそうだ。


「どうだ?問題なく使えそうか?」

「おおー!大丈夫です!普通に動けます!」

「俺も大丈夫だ」


うーん…スカベンジズのパワーアーマーよりも動きが滑らかでパワーが出てる気がする…やはり前線で拾える素材がそれだけ優秀というわけか…


サインも自身の装備を付け、自身のバッグを背負う。


「じゃあ、後はどこに行くかだな。車はそっちのを使わせてくれるんだろ?俺のオススメは初心者向きで生物兵器が多い【ミートゾーン】だ。それか危険だけど、強力な武器やら装甲や手に入る【ハイガル戦地】ってとこかな」


「そうだな…まずは無難にミートゾーンからで頼む」

「了解した…よいしょっと」


サインは俺達のよりそこそこ膨らんだバッグを背負う。何故かその隣でダイナロイドが頬を膨らませて明らかに不満そうにしている…


「私もバッグ欲しい!」

「今回は人間が多いとこにも寄るからダメだ。浮いてるバッグとか違和感しかないだろ。大人しく透明になってるんだぞ。光学迷彩バッグはウチにはないんです。ほら、俺のバッグにアミューの分も入ってるから。な?」

「ぶーー!」


なんなんだろう。この人間っぽさは。

生物兵器の要素の欠片も見えない。


ちなみに銃のナンバーを調べたら【持ち主:へのへのもへじ】と出てきた。

ふざけてやがるぜ…




そんなこんなで俺達はその【ミートゾーン】へと出発した。俺達はサインから説明を受ける。


「ミートゾーンは名前の通り、食える生物兵器が多くいる。ミノタウロシ、オークン、チキンナイトとかだな」

「なんていうか…外の人たちは独特なネーミングセンスしてますね」

「ああ、シェルター内にあるゲームのパチモンみたいだ…」


ダイナロイドがサインの方を向いてヨダレを垂らしてる。まるでサインが捕食される寸前みたいだ。


「そいつらってハンバーグより美味しい?」

「美味しくわないな」

「じゃあ食べない」

「…イツボシシェルターのハンバーグ並みに美味しい食べ物なんて他でどこで手に入るんだか…」


イツボシシェルター。かなり有名な食のシェルターだ。はるか昔に人類が行っていた畜産が中ではまだ営まれていて、新鮮な肉や野菜が食べれるという。もちろん俺も何回か行ったことがある。


「アレを食べたことあるのか…美味いよな」

「うん!冷凍のハンバーグ定食を食べたんだよ?」

「えっ、食べたことないのもしかして俺だけ…?」

「リビルもいつか一緒に行こう。俺がおごってやるぞ?」

「いいんですか!楽しみにしてます」


…若干フラグめいたやり取りになってしまったが気にしないのが吉だよな…

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