35.姉御って何者?

【サイン視点】


「っというわけで結局あの出来事がきっかけで俺はヴィクトールさんの部隊に入れましたし、しかもしかもまさかですよ?2人で行動できるんですよ!もちろんちょっかいをかけられたことは不快でしたが、めちゃくちゃいい結果になったので今は感謝してるくらいです!」

「へ、へぇー?」


流石にリビルの態度の変化が気になりすぎて、トラブル覚悟で理由を聞いたら先日の出来事がきっかけで、この世の春を掴んでしまったようだ。ロウさん…あんたの嫌がらせは結局シェルターの人を大喜びさせて終わっちまったよ。


「な、なんか知らないけど、良かったねー?」


アミューも相手の群れのメンバーを殺したことに負い目があるのか、いつもよりぎこちない。ウチの仲間と出会った時のテンションの高さはどこいった?


「では、今日はこれで帰る!また来週に会おう!」

「お邪魔しましたー」

「おー、また入る時は連絡くれよ?隠れ家の罠が発動しちまうからな」


ヴィクトールとリビルは帰っていった。

俺は急いで情報端末を取り出しメッセージを打ち込み連絡する。

アミューが気になるのか覗きに来た


『姉御ぉーーーーーー!!!!』

『仲良くやれそうで良かったじゃねぇか。あの伝説のヴィクトール様と行動できるんだ。むしろあの新人君みたく私に感謝するべきだろ?』


やはりどこからか見ていたのか返事がすぐに来た…


『俺教えるとかできないですよ…』

『おめぇの探索をそのまんま見せてやればいいんだよ。深いことは考えるな。この間みたくアミューと2人でいるつもりで行ってこい』

『まあ…それなら?』

『ちなみに報酬は【アミューをイツボシシェルターに入れてやる券】をプレゼントだぞ?破格だろ?』

「!」


アミューが俺の肩をユッサユッサし始めた。俺まだ読みきってないんだ見えない見えない打ち込めないから文字モジモジ…

姉御からメッセージがまた来る。


『私はイツボシシェルターの運営にも一枚噛んでるんだよ。そのくらいお安い御用さ。でも奢るのはナシだ。飯代くらい自分で稼いでみろよ。2人でな』


マジで姉御はいったい何者なんだよ…

イツボシシェルターの運営って…頭おかしいくらい偉いじゃねぇか…本当にウォーカーなのかも怪しくなってきた。


「私!頑張るよ!頑張ってあの人達と仲良くなる!」

「おーまあ頑張るのはいいことだなぁー」


アミューさん?そろそろ揺するのやめていただけませんかね?あと仲良くなることがゴールじゃないからね?


…俺もアミューのために頑張るか。とりあえず前線の歩き方をレクチャーするというよりかは、色々と歩き回って前線のアレコレを見せてやればいいんだろうな。そのプランを軽く考えながら準備を進めよう。


「アミューも有事の時に手段が増えるように色々武器も食っとけよ?」

「わかった!」


さて、まずは減った俺の重パワーアーマーの補充をしよう。予備込みで7セット用意してたのに今使えるのは5セットになってしまった。これは心許ない。他の人から見たら余裕に見えるかもしれないが俺の心は許さない。そもそもパワーアーマー無しで外を歩くのはかなり危険なので、これが無くなるということは人生の詰みなのだ。


とは言っても俺の隠れ家には予備の装甲もたくさんあるし、必要な機械部品も揃っている。伊達に長く前線を歩いてませんからね!


「パワーアーマー作るの!」

「アミューのじゃないぞ?俺の予備を作るんだ」 

「なーんだ」


このテンプレートを使ってできるのはあくまで俺の予備なので、アミューのをこれで作ったらまた壊れちまうよ。


「アミューのは設計図から作らないと…その前に材料か?アミュー?この装甲(前線素材)両手で持って左右に引っ張ってみてくれ」

「いいよー!」


バキバキバキ!


ふーん、俺じゃ作れないんじゃないかなアミューのアーマー?アミューのパワーに耐えれる素材はいったいどんなところで取れるんですかね。


「私の力の確認?いいよ?もっと硬いのでも多分割れる!」

「アミューは凄いなぁ〜」

「えへへ」


結局俺の隠れ家にあるものでアミューが割れなかったのは、たまたま拾った生物兵器【ダンゴロムシの甲殻】だった。


最前線素材だよ取りに行ったら死ぬわ!

そもそも硬すぎて加工できないぞ!


というのはアミューには伝えず、


「気長にゆっくり作ってこうな?」

「うん!」


そう、時間はまだある…未来の俺よ頑張ってくれたまえ

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