34.なんで俺やねーん!

【サイン視点】


賞金を分けてもらった俺は車を運転してロウさんを、ロウさんの隠れ家まで送った。なんかすげーゴネたけど帰らせた。マジで俺の隠れ家に住み着きそうな雰囲気があったのが怖かった…


「…サイン?どうして私のことを庇ったの?殺したの私なのに」


透明のまま助手席に座ったアミューが聞いてきた。


「アミューのことは今はあんまり人にバレるのは良くないからな。俺がやったことにするのが一番都合がいいだろ?」

「そうなんだ…」

「?どうしたんだ、アミュー?」


もう声だけでわかる。この間のしょぼくれてる時と同じだ。


「ねえ、サインはどうして私にこんなに優しいの?」

「優しい…か、俺個人としては別に特別なことをしてるつもりはないぞ?アミューは俺の、俺達の仲間なんだ。だからそんな一々気にしなくていいんだぞ?前にも言ってたが、俺だって色々アミューに助けてもらってんだ。また助けてくれればいいさ」

「そう…なんだ」


…まあ、人のご飯を欲しがるのは少しどうかと思うけど、可愛いので許す。


そして俺達は俺達の隠れ家に帰った。

長い長いドライブの間は特に何も起こることもなく。





そして数日は隠れ家でアミューと2人でロウさんの動画を見たり、入った賞金でヤミイチから商品を買ってそれで遊んだりしていたら…俺の情報端末に姉御からメッセージが届いた。


『今日はそっちに客が行く。迎えて話を聞いてやれ』


はぁ?まあいいけどさ。誰が来るんだ?

とりあえずアミューには透明になって姿を隠してもらうことをお願いした。


すると情報端末にメッセージが届く。

登録していない番号なので誰だかはわからない。


『到着した。罠の解除をお願いする』


はいはいー、一応誰が来たか見とくか…

なんでやねーん


「意外と良いところに住んでるんだな」

「凄いですよヴィクトールさん…ここの武器だけで戦争もできそうです」


この間会ったヴィクトールとエランダシェルターの検問所の職員が来た。


「やあ、サイン…というコードネームであってるか?」

「あってるぞ。それにしてもいったい何の用で?というかウチのリーダーとも知り合いだったんだな…」

「ああ、俺は昔そいつに半殺しにされたことがある」

「…なるほど。姉御に会ったことがあると」


ヴィクトールすげーな。実は俺は姉御に現実で会ったことはないんだよな。むしろ仲間の俺らでも会ったことのあるやつのが少ねぇんじゃないか?おっかねぇ顔をしてんだろうなきっと…


「それよりもなんでまたウチに来たんだ?俺姉御からなんも聞いてないからわかんねーんだ」

「むしろ何も教えられてないのかよ。マジで大丈夫なんだろうな…俺達はお前に【前線の歩き方】とやらを教わりに来たんだよ」

「…はい?」

「とりあえずあなたと面識がある俺達2人が選ばれたというわけです。よろしくお願いします」


なんで俺やねーん!

しかもあの検問所の人の態度の変化はなんだ!前の見下している感が一切ない…むしろ目がキラキラしてやがる。


「まあ、姉御からの頼みでもあるしな。俺も引き受けることは全然いいんだが…俺の言う事はちゃんと聞いてくれるのか?」

「もちろんだ。俺はお前の指示を疑わない。俺もシェルター内の人間だからもちろんウォーカーが嫌いだが、教わる身としての立場はわきまえるつもりだ」

「俺も大丈夫です!こんな凄い武器をたくさん集められる人に教われるなんて…俺はむしろ楽しみですよ」


…なんだよ検問所の人。いいやつじゃねぇか。俺の集めた武器を褒めるやつに悪いやつはいねぇ。ロウさんを止めてやれなくてすまんなと心の中で思っておく。


「あとは…俺は個人的にだがお前の秘密も知っている。だから気兼ねなく姿を見せてくれてもいいんだぞ?」

「ああ、やっぱりそうなのか…アミュー」

「うん」


アミューがスカベンジズの最強の前に姿を見せた。




【ヴィクトール視点】


(やはりダイナロイドだったか…)


指をモジモジさせながら姿を現したのは最前線で暴れる生物兵器のダイナロイドだった。


「……」


リビルはキョロキョロしている。なんと言ったらいいのかわからないのだろう。

恐らくあれがダイナロイド…というかそういう生物兵器なのだということも知らないのだろうな…そして俺達の仲間をやったのもコイツなんだろうが。あの件は完全にこちらに非があるのでそこも触れることはしない。


「ほら、アミュー挨拶しないと」

「こ、こんちわ?」

「こんにちは?」


リビルが引き攣った笑みを浮かべ、ダイナロイドと握手をしている。


「で、どうするか?今から探索に行くのか?この時間だと前線に行くなら車移動になるが…俺の車だと三人しか乗れないぞ?」

「今日は挨拶だけのつもりだったから行かなくて大丈夫だ。むしろ今からでも前線に行けるのか…」

「ウォーカーは自由なんでね、じゃあいつ頃に行くか?」

「次の休みは来週だからそこかな…実はこれはスカベンジズの任務外の行動なんだよ。上にバレたら怒られるどころじゃないんだ…」

「すぅ~…そっちもそっちで大変なんだな。それでも前線に行きたいのかよ」

「ああ、俺たちもシェルターに籠ってるだけじゃ。自分たちで守ることもできないってわかったからな。ようやく地盤が整ったから行動を始めたんだ」

「あと一つ聞きたかったんだが…どうして俺がその指導役なんだ?」

「お前んとこのリーダーが『いい人材がいるぞ!忙しいお前らにも最適!サクッと前線に行ってサクッと帰るやつがうちにいる。ちょうどお前がこの間会ったやつな?性格はうちのメンツの中では、まあまともな方だから安心してくれ。実力はダメな方だが探索は安定感があっていいぞ?』的なことを言ってた」

「…うん、まあ納得はできた…できたけど…ダメな方はないだろ姉御…」


…あのリーダーから見たら大体のやつらはダメな方になるだろとは思うけどな…

あと【姉御】って呼ばせてるのが地味に気になる…あの見た目で?

この間久しぶりに会ったが最初に会ったのは何年も前なのに、出会った当時と姿は変わっていなかったから…

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