23.ハイガル戦地 道中
【アミュー視点】
サインに連れられハイガル戦地?ってところに来た。まだ目的地から遠いはずだけど遠くから砲撃や爆発の音が響いてくる。そしてサインは車を停めた。
「まあこの辺でいいか。車に罠仕掛けとくからちょっと待っててくれ」
「うん」
サインは自分の車に罠を仕掛けていく、凄い厳重だ…でもこれだと…
「ねえサイン?この罠下手したら車ごと吹っ飛ばない?」
「車を人に盗られるくらいなら爆破して、盗難したやつと一緒にスクラップになってもらうほうがいい」
「そうなんだ」
ならいいや、帰りは別に走っても帰れるもんね。
「よし終わった行くか!」
「あいあいさー」
ここからは会話は最低限だ。サインのハンドサインに従いついていく。サインのハンドサインのわからない部分は昨日の夜に教えてもらった。でもまだ出会った頃にやってたやつを教えてもらっないから全部ではないんだろうけど。
そして1時間くらい先に進んだところで20人くらいの人間達が機械兵器と戦っているのを見かけた。
サインはその光景を黙って見ている。
機械兵器はニンジャマスターが3体だった。
ニンジャマスターは敵の弾を避けながら片手に持った剣で人間を殺していく。しかし何故か戦ってるのは1体だけで残りの2体は敵の背後に立つように移動している。しかもその背後の1体が攻撃を始めた場合、それまで戦ってた個体も移動に専念をし始めてしまうので結局戦ってるのは1体だけだ。
サインが小声で教えてくれる。
「アミューの目に見えてるかはわからんが、あそこにはニンジャマスターが3体いるぞ。瞬間移動を再現するためだけに2体は控えてるんだ。光学迷彩を切り替えて戦うやつだけ姿を見せている。一応これが瞬間移動のからくりな?戦ってるやつを倒したら透明のは撤退するから無視でいい」
私は頷いてリアクションした。
正直私はその透明のやつも普通に見えているから、なんで1体だけしか攻撃してないのか疑問だったけど解決した。
人間達のボスらしいやつが巨大な斧をニンジャマスターに叩きつけ、受けたニン剣ごとニンジャマスターを斬った。その瞬間に透明だったと思われるニンジャマスター達が撤退していく。人間達も倒したニンジャマスターから色々装備を剥ぎ取って先に進んでいった。
私とサインはその方向とは違う方向に進んでいく。そういえばさっきの人間たちは殺された仲間に見向きもしていなかったな…
そしてまた進んだ先でもさっきとは別の人間達が機械兵器と生物兵器の三つ巴になって戦っていた。ガンマンマスターが3体に生物兵器の【チャージャー】がたくさん。人間は5人。
チャージャーはイノシシのような見た目で前方にシールドのような肉壁を展開しガンマンマスターと人間を弾き飛ばそうと突進している。
それをガンマンマスターらが的確にシールドの脆い部分を撃ちシールドを破壊、チャージャー達を次々と仕留めていた。
人間達はタイミングを見て煙玉を使い煙に紛れた。そしてチャージャーを仕留め終わったガンマンマスターにこっそり近寄り集中砲火をして2体撃破する。残った1体は素早く反撃し人間の1人を仕留めたが、残った人間に撃破され戦いが終わる。
しかしその後の人間達は揉めていた。
1人は死んだ仲間に抱きつき3人は何か言い争っている。サインはそれらも無視してこっそり先に進んだ。
さらにその先では両断された人間の死体たちを生物兵器達が一心不乱に食べている。
…こういうとこにも人間ってたくさんいるんだなぁ。
生物兵器達もスルーして先に進むと突然サインが壁を軽く叩き始めた。一箇所変な音が鳴る箇所があり、サインはそこに背を付けると私に向かって手招きする。近寄ると片手で私を抱き寄せ、そして何かスイッチを押したのかカチッと音が鳴り、壁がクルンと周り私たちは壁の裏の小さな空洞に入った。
「ふぅ。一旦ここで休憩しようか。俺の仲間が作った安全地帯だ」
「…うん」
「どうした?疲れたのか?」
「疲れてないよ?ただ、こういうとこにも人間ってたくさんいるんだなぁ…って」
「いるぞ。前に戦ったアーマードくらいの実力があればこの辺は探索できるからな。俺たちはもっと奥に行くぞ」
なんかモヤモヤする。でもモヤモヤの原因はわからない。
「一発も撃たずにここまで来れたのは良かったな。こんなところで無駄な消耗はしてられん」
サインはバックから食べ物を取り出し簡易食料を食べ始めた。私もバックから食べ物を出す。サインは私のバックの食べ物を果物の缶詰にしてくれていた。美味しい。
「…」
【サイン視点】
アミューの様子がおかしい。多分人間と機械兵器の戦いを見た辺りからか…
私も戦いたかった?とか?でもあんまりアミューを仲間以外の人間に見せたくないしなぁ。
「…人間って…ややこしい…」
んー、違いそうだ。何を思い詰めてるかは知らんが…
「人間はややこしいぞ。この星で生きてる生き物の中で一番ややこしいと俺も思ってる」
「んーとね…サイン、なんかね?よくわからないけどモヤモヤするの。私が人間じゃないからわからないことなのかな?」
マズイな…アミューが悩んでる内容が俺の想像より重そうだ。しかし俺に相談したことで解決できるわけもなし…いや、思考停止して諦めるのはアミューに悪すぎる!頑張れ俺の脳みそ!アミューを元気にするんだ!もしかして俺が他の人間を見捨てていたから冷たいと思ったとかか?ああいうのは自己責任なんだぞ俺たちウォーカーの間では…でも命か…
「ふぅ〜…アミュー?あのな?アミューと比べたら人間は確かに簡単に死ぬ生き物だ。俺だってそうだぞ」
「!!」
「だからこそみんな死なないように念入りに準備するし、それで死んだら死んだで自己責任…」
「サインが死んじゃうのはヤダ!」
突然アミューが泣き始めてしまった…おっと、うちの娘、もしかして俺が死んだらってことを考えちゃったのか?俺の心配してくれてるとは…嬉しいじゃないか。まだ出会って数日なんだけど随分と懐いてくれたようで、アミューが落ち込んでるのに思わず頬が上がってしまいそうになる。
とりあえず頭を撫でてあげよう。
「死なんよ俺は。そのための装備はしっかり持ってる。アミューも手伝ってくれるだろ?だから死なんよ」
「うん!うん!」
…まあ俺以外の命は雑に消し飛ばしまくるんだろうなとは少し思ったが、それは言わないことにしよう。
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