14.ミドリノシェルター跡地 待ち伏せ

【サイン視点】


畑でお腹いっぱいに果物を食べた後に俺たちは隣接された工場に入った。工場はミツガレの言ってた通り缶詰工場だった。畑でドローンが動いてたのを見て予想はしてたがこっちもちゃんと稼働している。奥の方には種類毎に梱包された缶詰が山のように積まれている。


「サイン…私が産まれてきたのはここの缶詰を全て食べるかもしれない…」


アミューがはち切れんばかりに膨らんだお腹をこちらに向けてなんか言ってる。君あんだけ食べてまだ食べる気かね?


「…僕食べ過ぎてそんなになるお腹って漫画の世界の話だけだと思ってました」

「私もよ、まあ先輩は私たちと身体の作りが違うんだしそういうもんだと思っておきましょう」


俺たちは棚の缶詰をカゴに入れていった。

俺は黄色のトゲトゲした植物の缶詰を多めに…

酸っぱいのと甘いのバランスが絶妙でとても美味しかった。


アミューは外側が黄緑、中がオレンジの果物が入った缶詰をたくさん詰めている。とても楽しそうだ。いや楽しいよな!探索の醍醐味だもんな!こういうおいしい体験があるからこその探索なんだ!好きなもんを詰めて家に帰る。ぬくぬくシェルター暮らしのやつらにはわからんのですよこの楽しさは。


鍵屋は密封のカゴに土も入れてるからか、缶詰はあまり入れられてない。代わりにいろんな種類をバランス良く入れている。性格出るよなぁー。

「くっ、この程度の量の土じゃ持っても何もできないのに…僕もみんなと同じ容量重視のカゴにするべき…いやでも土は貴重…うーん…」

なんか葛藤してる。


「他の人間にいずれはこの場所を確保されると思うと腹が立つわよねー」

ミツガレもいろんな種類をバランス良く缶詰を集めているようだ。


「んー、私たちが確保すれば私たちのものじゃないの?」

「個人でこういう場所を管理するっていうのはとても難しいのよ先輩」

「そうなんですよー、それこそもっとたくさんの人間がいないといけませんね」

「…人間ってややこしい!」


アミューはあんまり納得はしてないけど、理解はしてくれたようだ。頬を膨らませてるアミューが可愛い。


カゴを缶詰でいっぱいにして俺たちは帰路に着く。消毒通路についたところでいったんみんな立ち止まる。


「待たれてるわね」

「待ち伏せされてますね」

「待ち伏せか」

「なんかいるね」


全員気づいたようでみんな同時に声を上げた。


「どうする?殺す?」

「待ってください。待ち伏せがスカベンジズだったら少し厄介なので…外の生きてるカメラを乗っ取って…あー、アーマードのやつらが勢揃いしてますねぇ。50人はいますよ?」

「そこそこ有名な盗賊ウォーカーの群れね。前に少し見かけたことがあったけどそんなに強くはなかったわ」

「俺たちがここに入ったのを知ってる動きだな。どこからか見られてたか?」

「そんな気配はなかったよー」


うーん、じゃあどうしてバレたんだろう…ってのはどうでもいいか。とりあえず戦いは避けられないようだ。多分この出口をのんびり開けたら蜂の巣にされるだろうし話し合いとかの選択肢はなさそうだよな。いったんみんな座って話し合いをしておこう。


「カゴはいったんここに置いて行きましょう。鍵屋、作戦はどうする?」


…俺は?


「まず外気をここに入れないようにアミューさんが開けた穴を塞ぎましょう」

「そうね、外の空気をあまりここに入れたくないし」

「っで外に出る扉をアミューさんが盛大に吹っ飛ばして全員一気に外に出てなんやかんやでおしまいです」

「了解」

「りょーかい」

「?」


ミツガレ、鍵屋はかしこいキャラ気取ってるけど中身は実はアホだぞ。まあ俺たちの群れで頭がいいやつのが少ないんだけどさ。


「待ち伏せされてる時点で正攻法な作戦で行くより、イレギュラーな動きで翻弄した方がいいだろ。誤射だけは気をつけてやろうぜ」

「っで殺していい?殺さない?」


アミューが俺に聞き鍵屋とミツガレがこっちを見る…


「……いいぞ」

「わかった」


アミューの目からハイライトが消える。部屋の気温が下がった気がする。ふっ、これが殺気ってやつか初めての感じたぜ…座ってなかったら足がガクブルして非常にカッコ悪いことになることだった…ミツガレも鍵屋も顔を青くしている。空気を変えねば。


「アミューはもう一回防護服ちゃんと着ろよ。消毒液がしみたら嫌だろ?」

「うん!」

アミューの目にいつもの色が戻った。


「あ、あと俺煙玉持ってるからアミューが蹴破る前に使っておくわ」

「そ、そうですね!その方がいいですね。やるからには僕も全力で行きますよ」

「ふぅ、私の勘は一級品であることが証明されたわ…」


じゃあ行くか!

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