13.ミドリノシェルター跡地 お宝2

【サイン視点】


休憩を終え外に出てミツガレの道案内に従い行動する。陣形は…変わった。


「気づかなかったですよサインさん、あなたの腰に刺さってる剣。ニン剣(ニンジャマスター御用達電磁ブレードの略)じゃないですか。しかもほぼ新品、いやぁ近接武器持ってる人が中衛に行くべきですよねぇ〜?」

「これは緊急用だったんだぞ。使う気はなかったのに…」

「僕ショットガンの弾たくさん使っちゃったんで役割交代です」


鍵屋が後衛に下がって俺が中衛になった…

アミューが倒しきれなかったマンティスにニン剣をテキトーに振るだけで手応えもなく斬れる…当たり前だ前線武器だぞ!もっとやべぇのと戦う武器なのに…

ああ、ブレードに内蔵されたエネルギーがどんどん消耗されていく…


「剣使うの下手ねぇ。子供が玩具の剣振ってみるみたいよ?ほらほら、サインのカッコいいとこ見てみたい〜」

「俺はマジで戦うの苦手なんだよ!これだって一応は普段通りに戦ってんだぞ?」


ミツガレが後ろから援護(してない)野次を飛ばしてくる。くそう、鍵屋が無駄にスタイリッシュな戦い方したせいで俺のへっぴり腰剣術が目立ってしまう。


「アハハー、サイン変なのー。剣はこうやって振るんだよ!」


アミューがシェルター内にあった電柱を引っこ抜いてブンブン振ってる。そんなんでわかるかぁー!


「ああ、そこの瓦礫の下ね。そこから地下に向かって進む道があるのよ」

「地下に畑があるんですか?」

「そうよ。地下にあったからこそ無事に残ったんでしょうね」

「へぇ、なら他のとこにも同じように無事に残った畑があったりするかもなよいしょっと」


瓦礫を退けると頑丈そうな扉が出てきた。扉を開けて中を覗くと長い一本道が見える


「この道なんの気配もないから敵はいないっぽい?でもなんか臭い…」

「ここは消毒室だから歩いてるとあちこちから消毒液が噴出してくるわよ?全身消毒ね」

「嫌だなぁ…装備が錆びそうだ」

「いやこれは必要でしょう。新鮮な食べれる植物があるんですよ?外の変な菌を持ち込んで中の植物がダメになったらおしまいですって」

「入ったらそのドアを閉めるのよ?そしたら消毒が始まるわ」


ミツガレの後に続いて入った鍵屋がドアを閉めると周りから消毒液が出てき…


「うぎゃー!目が!目と鼻がイター!」


アミューが走り抜けて通路の奥に一人で行ってしまった…


「…俺たちも行くか」

「先輩が何か破壊しないか私少し心配だわ」

「早く行きましょうか。施設が無事なうちに…」


3人で走って消毒通路を抜けるとドアがまた見えてきて、そのドアは案の定人一人が通れる穴が開いていた。

その先の部屋でアミューはパワーアーマーを脱ぎ全身を壁に擦り付けて体に付着した消毒液を頑張って落としている。


「ペッペッ!マズイししみるし!消毒ってなんなんだぁー!」


…ダイナロイド対策には意外と消毒液が有効だったりするのか?っと思ったが消毒液を持ち歩いてるとアミューに嫌われそうなのでやめよう。

鍵屋はホッとした顔をしている。


「ドアが壊れただけで済んでよかったぁ…」

「でもセキュリティが発動してしまったようね。先に進むドアが開かなくなっちゃったわよ」

「ああ、僕が開けます…」


鍵屋がドアに触れると『ピッー』っと音と共にドアが解錠される。


「…便利ねあなた」


あの、ミツガレさん?なんでこっちを見ながら鍵屋さんを褒めるんですか?確かに俺はほぼなんにもしてないけども!


「私もうあの通路通りたくない」

「うーん、まあ帰りは…おっ!あの防護服着ていけば大丈夫じゃないか?」


部屋の横にあった透明な棚には全身を覆うタイプの防護服が並んでいた。アミューが棚を拳でぶち破り一着取り出す…どんだけ嫌だったの?


「これでよし!」


すぐに全身を防護服ですっぽり覆ったアミュー…少し着るのが早すぎるとは思うけど。

ちなみに尻尾を出すための穴は俺が破いてあげた。


アミューの準備ができたので道を知ってるミツガレを先頭に先に進むんでいく。左右にも扉があるがミツガレは無視して真っすぐ進む…

こういう扉、個人的には中がどうなってるか気になってしょうがないが、多分今回の目的には関係ないのだろうから我慢して進んでいく。時間は有限なのだ。


「ここよ。ここに畑があったわ」


ミツガレが頑丈な扉を指差す。


「ここに畑が…俺見たことないからよくわからんけど」

「武器オタクさんは興味ないでしょうからねそういうのは」

「ここにあの缶詰の中身が…ジュルリ」

「開けるわよ〜」


ミツガレが扉を開けるとさわやかな香りが広がった。地面には瓦礫も何もない、そして整備された道に土。正面には多種多様な果実を実らせた果物。空中にはそれらを管理し育てているであろうドローンがちらほら飛んでいる。


「おー、これは…とんでもないですね」

「俺空気が美味しいって感覚初めて知ったかも」

「ねー、私も思ったわ」

「赤いのうまー!」


アミューはすでに木に登って赤い果物を食べてる…手が早すぎるな。


「私たちも食べましょ?新鮮な果物なんて食べれる機会はそうそうないし」

「そうだな、俺も食べるか」

「僕は採取しながら食べてますねぇ〜」


この後みんな食べ過ぎた。


【???視点】


「そうそう、この座標に畑があるわ。アーマードのメンバー全員で確保したら一生遊んで暮らせるレベルのお金を支払ってあげるわ。じゃあ頑張ってね〜」


???は端末の電源を落とした。


「ふへへ、あなたも人が悪いですねぇ〜」

「悪いやつじゃねぇと生き残れねぇよ外の世界はな」

「ふへへ、そりゃあそうですけどね」

「おめぇも行くんだよ【ドクター】。連れていけるやつは全員連れてけ」

「ふへへ、わかってますよ。行ってきます」


ドクターは人の形をした肉人形にお姫様抱っこをされたまま部屋から退出していった。


「くくく、まさかあいつらの動向を追ってたらこんなに美味い話があるとはなぁ〜。運が良かったわ」


まさか畑とはな。健康な土はこの世界じゃかなり希少だ。畑の土トラック1台分もあればシェルターの富裕層エリアで贅沢三昧しながら暮らせるレベルだ。


「さて、どこの拠点を私好みの畑にしてやろうかねぇ」


すでにその畑を確保したも同然の思考で???は畑を作るのに適した場所の選別を始めた。

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