026 小太陽、七柱を穿つ
そこでは、人族と魔族の最後の戦いと呼ぶにふさわしい苛烈な戦闘が繰り広げられていた。
突如として蘇った魔王たちに対し、神々の力を宿した人族の兵は果敢に立ち向かう。いまやその力は拮抗していた。
第一柱・黒骸竜デスドラゴンには、かつて敗北したゼビウス大将軍が挑み、神獣サラマンダーの聖炎を借り受け、死の黒炎を呑み込み、燃やし尽くす。
その後方では第二柱・不死王ドラキュラが、多くの神殿騎士と彼らに宿る天使の力によって再生を封じられ、着実に死へ追い込まれていく。
さらに第三柱から第五柱――深海の女王スキュラクィーン、天空の覇者グリフォンロード、大地の狂王ベヒーモス。
これらには、神獣と化した軍馬を駆る騎兵隊や、女神と一体化した弓兵たちが激戦を繰り広げていた。
そして残るのは、第六柱・地獄王サタンと第七柱・暗黒天使ルシファー。
神に仇なす魔界の盟主たちには、セーラが顕現させた四大天使――ミカエル、ガブリエル、ラファエル、ウリエルが立ち向かう。
その戦いは、まさに神話や聖書に語られる最後の聖戦そのもの。苛烈にして幻想的、そしてどこまでも荘厳であった。
激闘が続く戦場の中、アイオスは最強戦力の一角として遊軍のまま自在に立ち回り、各戦線を駆け巡って着実に敵勢力を削っていく。
まず討たれたのはデスドラゴン。
大将軍ゼビウスと互角の死闘を演じていたが、そこへアイオスが駆けつけたことで戦況は一変。
最高闘神の力を遺憾なく発揮した彼は、たった一振りで致命傷を与え、その巨体を薙ぎ倒した。
アイオスはすでに瀕死のデスドラゴンをゼビウスに託すと、休む間もなく次の標的へ向かう。
その途中、愛馬にも神獣の力が宿り、馬体が灼熱の炎を纏った。姿はまさに天翔ける太陽馬――ピュロイスそのもの。
人馬一体となったアイオスとピュロイスは、輝きながらとてつもない熱の塊――小太陽となり、青い触手で兵の精気を吸い取るスキュラクィーンへと駆ける。
猛烈な突進は、深海の女王の巨体に巨大な穴を穿った。
息絶えかけたスキュラクィーンを一瞥したアイオスは、すぐさま天へ駆け上がる。
そこには、女神たちの光弓を必死に防ぎ続けるグリフォンロード。アイオスは大気を裂いて迫り、抜けざまに鋭く剣を振るった。
一閃――天空の覇者の大翼は切り裂かれる。グリフォンロードは苦悶の叫びを上げながら血飛沫を散らし、落ちていく。
その先には、神獣を駆る騎馬兵たちと激闘を繰り広げていた大地の狂王ベヒーモスの姿。
遥か上空から落下したグリフォンロードと激突し、押し潰されたベヒーモス。咆哮とともに起き上がろうとする。
だが、空から無数の光矢が降り注ぎ、二体の巨獣は針山となった。そして、重なり合ったまま絶命する。
戦況は人族の勝利に大きく傾いた。アイオスは残る魔王の討伐に加勢しようと戦場を見渡す。
後方では、デスドラゴンを討ち果たしたゼビウス大将軍が、神殿騎士たちと協力してドラキュラを再び地獄へ還していた。
視線を上空に上げると、地獄王サタンと暗黒天使ルシファーが、セーラから神を超える加護を与えられた四大天使によって、首を刎ねられ滅されていた。
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