024 闘神は頷き、依り代は歩む
突如、目の前に広がった神秘的な光景に、兵たちは思わず足を止め、進軍が鈍る。
だが、アイオス殿下がすかさず音声拡張の魔道具を使い、戦場全体に激を飛ばした。
「恐れるな、我が勇敢な兵たちよ! これは聖女皇セーラ殿が神に祈り、我らに授けられた奇跡だ! この祈りに応え、目前に迫る魔族どもを一掃せよ!」
それに呼応して兵たちは雄叫びを上げ、魔族へと走り出す。だが、それよりも早く、魔族の軍勢が『神々の領域』へ雪崩れ込んだ。
いくら伝説の天使や女神といえど、強力な魔族を相手に容易には討ち取れず、戦況は一進一退となる。
しかし、人族の軍勢が『神々の領域』に到達すると流れは大きく変わる。兵が合流して数で優位に立ち、戦況は徐々に人族側へ傾いていく。
加えて、兵の中で高い魔力を持つ者には、天使や女神、聖獣たちが憑依して受肉し、確かな実体を得た。
実体化した聖なる存在は圧倒的な力を振るい、魔族の軍勢を蹂躙し始める。
さらに『神々の領域』でしか存在できないはずの住人たちも、実体を得たことで領域外の活動が可能となり、そのまま魔族を激しく追い詰めていった。
「……なかなか圧巻ですね、アイオス殿下」
「そうだな。このままいけば、お前の出番もないかもしれんぞ」
「……なら、いいんですが。それより、最高闘神アポロ様が殿下をお待ちのようですよ」
自ら作り出した『神々の領域』の中央に、ひときわ神々しい光を放ちながら座する最高闘神を指さした。
私を除けば、この軍で最も魔力を持つアイオス殿下こそが、あの神の依り代にふさわしいと申し出る。
「いや、全軍の指揮官が最前線に出るのは、どうかと思うぞ」
「……いや、いや。これが最後の戦いになるかもしれないので、最後は派手にいきましょう」
嫌そうな顔をしたアイオス殿下を見て、私はため息をつき、大袈裟に肩を落とし、しんみりと呟く。
「……結局、殿下は、私との約束を守ってくださいませんでしたね」
その言葉にアイオス殿下も同じく深いため息をつき、後方に控える部下たちに向かって声を張り上げた。
「おい、俺たちの前へ出るぞ! これが最後の戦いになるかもしれないんだ。手柄を上げる最後の機会だ、思う存分、暴れろ!」
号令に部下たちは一斉に応じ、そのまま『神々の領域』へと駆け出していった。殿下自身も兵に続き、領域へと踏み込む。
その瞬間、最高闘神アポロが深く頷き、静かに、揺るぎない意志でアイオス殿下に憑依した。
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