006 黒炎の竜、魔女降臨
この戦いの総指揮を任されているキリストロニフ聖王国の大将軍ゼビウスは、今回も無事に魔族の侵攻を食い止められたことに安堵の息を吐いた。
その矢先、魔族軍の後方に――強大な黒きドラゴンが現れた。
三年続くこの戦争で、大型の魔族が現れたことは一度もない。
なぜ自分が総指揮を任されたこの戦いに限って、そんな化け物が現れるのか――彼は歯を食いしばり、己の運のなさを呪う。
だが、立ちすくんでいる暇はない。このまま何もしなければ、戦線は崩壊し、魔族たちが人間の領土へなだれ込んでくる。
覚悟を決めたゼビウスは、自ら率いる聖王騎士団を引き連れ、魔族の軍勢に突撃する。
鋼鉄の壁のように立ちはだかる魔族たちを次々と蹴散らしながら中央を突破し、そのままドラゴンのもとへと辿り着く。
そして、ゼビウスは溜めに溜めた最大級の火魔法を放つ。
「
ゼビウスがドラゴンを前に大剣を両手で持ち、上段に構えると、背後に巨大な烈火の剣が現れ、彼と同じく切っ先を天に向けた。
背後に凄まじい熱を感じ、魔法の発動を悟ると、雄叫びを上げながら剣を振り下ろす。
それに呼応するように、烈火の大剣も咆哮のような音を立てて、ドラゴンへと突き進んだ。
だが、巨大な赤き刃が迫る中、ドラゴンは口から黒き炎を吐き出し、その炎によって烈火の大剣は一瞬で焼き尽くされた。
ゼビウスは渾身の魔法がいとも容易く無効化されたことに愕然とし、地面に両膝をついて崩れ落ちた。
周囲の騎士たちも、聖王国有数の実力者たる彼の魔法が防がれるとは思わず、ただ呆然と立ち尽くしていた。
たった一撃の防御で、精鋭ぞろいの戦意を根こそぎ刈り取ったドラゴンは、つまらなそうに赤い目をゼビウスへ向ける。
そして、口を開き黒炎を放とうとした、その瞬間――黒く輝く物体が飛来し、顔面に直撃。ドラゴンはもんどりを打ち、地面に転がる。
突然の出来事に、誰ひとりとして状況を理解できず、ただ目の前で起きた光景を見つめるだけ。
騎士たちの前に、黒き衣を身にまとった
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