003 卒業総代、聖女筆頭
――三年後。ゼウパレス修道学院・大講堂。
「それでは、今年度のゼウパレス修道学院・卒業式を執り行います。続きまして、今年の卒業生総代、セーラ・フォン・ウラノスさん。卒業のご挨拶をお願いします」
「はい! 皆さま、本日はゼウパレス修道学院の卒業式にご列席いただき、誠にありがとうございます。我々卒業生は――」
十二歳の誕生日にウラノス王国を発ち、ゼウパレス修道学院へと入学したセーラは、父との約束を胸に、この三年間、常に首席の座を守り続けた。
そしてついに、卒業生総代として、栄誉ある舞台に立つことを許されたのだった。
この卒業式には、世界各国の王族や大臣はもちろん、世界有数の大富豪や各ギルドの本部長といった錚々たる有力者が一堂に会し、卒業生たちを祝福する。
とりわけ今年は、歴代最高の成績を収め「百年に一人の天才」と称される、ウラノス王国の第四王女セーラの姿をひと目見ようと、多くの賓客が集まっていた。
「――あれが、歴代最高の聖女と名高いセーラ殿下か。なんでも、特級魔法を複数同時に発動できるらしいぞ」
「それに、さすがはウラノス王国の王族。金色に輝く艶やかな髪に、太陽のように煌めく黄金の瞳……。聖女でなければ、ぜひ儂の息子の嫁にもらいたいくらいだ」
セーラが卒業生代表としての挨拶を終え、壇上から静かに降りると、会場中の視線が一斉に彼女へと注がれた。
しかし、当の本人はそれにまったく動じる様子もなく、淡々とした表情のまま自席へ戻り、前を向いて静かに腰を下ろした。
◆
生徒を含めて、皆が私に羨望の眼差しを向けてくる……でも、いったい何がそんなに羨ましいのだろうか。
首席で卒業して今年度の聖女筆頭になれば、すぐに魔族との戦いの最前線へ送られ、過酷な環境に放り込まれるのは目に見えている。
しかも、周囲にいるのは「精鋭」などと言えば聞こえはいいが、実際には筋肉でしか物事を考えられない
そんな連中に、付与魔法や治癒魔法をかけて支援しなきゃいけないのだ。
おまけに、最悪の場合は自分も戦闘に参加して、広範囲の特級魔法をぶち込む羽目になる。
正直、どこにそんな羨ましがる要素があるのか、私にはまったく分からない。
それでも私は父上との約束を守った。そして、聖女として生きることを正式に許された。
拍手が遠のく。式台の脇で、聖王国の使者が私の名を呼んだ。
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