002 第四王女、聖女を志願す
――十二年後。ウラノス王国・王城、謁見の間。
「お父様。私も今日で12歳になります。できれば、ゼウパレス修道学院に入学し、聖女として世界の平和のために魔族と戦いたいと思っております」
私はあえて宰相や大臣たちが居並ぶ謁見の間で、父であるウラノス国王陛下に対し申し出た。
――聖女として人間の国に侵攻しようとする魔族たちを阻止する戦いに参加したいと。
正直に言えば、私は魔族にも世界の平和にも、さほど興味はない。だが、私の置かれた微妙な立場が、それを許してくれない。
私はこの世界の小国――ウラノス王国の第四王女として転生してしまった。
お父様には申し訳ないが、ウラノス王国には資源も海もなく、学制も未整備。大国の均衡に守られているだけの弱小国である。
だが、唯一、特筆すべき点があるとすれば、それは両親をはじめ、王族の血を引く者は皆、非常に容姿端麗で繁殖力が強く、子だくさんであるということだ。
そのため、容姿を求める有力国家の王族や、血統を欲する世界有数の大富豪から第二・第三夫人、あるいは夫君としての需要がある。
その後ろ盾と支援金によって、何とか国の運営を成り立たせているのだ。
私のひとつ上の姉、コリン姉さんは、隣国ベストレア帝国の皇太子の第三夫人として嫁ぐことが決まっている。
だが、その皇太子の容姿は非常に残念で、かなりふくよかな体型をしている。
とはいえ、ベストレア帝国は巨大な鉱山をいくつも有し、希少金属が豊富に採れる、世界でも屈指の大国だ。
つまり、このまま何も行動を起こさなければ、私もいずれ、どこかの王族や大富豪と結婚させられることになる。
しかも、それは決して対等な関係ではなく、限りなく愛人や奴隷に近い形での「嫁入り」となるだろう。
「お父様。どうか、私のわがままをお聞き入れいただけないでしょうか? この右手にある聖女の紋章を持って生まれた時から、私は世界のために魔族と戦う覚悟を持って生きてきました。何卒、聖女として生きることを、お許しください」
私は床に両ひざをつき、胸の前で両手を組むと、玉座に座るお父様に向かって頭を下げ、祈るように願いを告げる。
それを見た宰相や大臣たちは目に涙を浮かべながら、王であるお父様に、どうか願いを叶えてやってほしいと訴える。
お父様は一瞬、ためらうような表情を見せたが、やがて愛しい娘の願いを聞き入れ、目に涙を浮かべながら頷いた。
そして「首席で卒業すること」を条件に、私のゼウパレス修道学院への入学を認めてくれたのだった。
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