八歳年下の彼は、太股でよく眠る ~人類の希望は私の枕がないと全快しない~

蛇頭蛇尾

八歳年下の彼は、太股でよく眠る ~人類の希望は私の枕がないと全快しない~

 



「よくぞお越しくださいました。皆様のご帰還を喜ばしく思います」


 レリーヴィル・デ・ロコダット王女として、私は厳かに告げた。意匠を凝らした格式高いドレスが、挙動に合わせてわずかに揺らめいた。

 眼前では、リーダーである一人の少年とその背後に三名が片膝をついて平伏していた。


 身なりを整然と保ち清潔を怠らない彼らは、この国のお抱え冒険者として礼儀作法を弁えており、他国に派遣しても恥ずかしくない。


「ありがたきお言葉にございます。レリーヴィル王女殿下におかれましては、ますますのご健勝を切にお祈り申し上げます」


 顔を上げた赤髪の少年はかしこまった口調で頭を下げた。武装した兵士たちの圧など物の数としない落ち着いた声音だった。


 すらりとした体躯はまだ発展途上ながらも、冒険者としての経験が少し大人びさせているようにも見える。そんな彼は、呪いによって床に伏せる父に代わり、豪奢な椅子に腰を下ろしている私へ穏やかな視線を向けている。それに対して儀礼的な微笑で返した。



「それで、今回の吐霧将軍コーゲルネスの打倒についてですが――」


 それから十数分ほどの報告と褒賞を経て、私は彼らを解放した。







 自室にて、私は全身鏡の前で身体を揺らしていた。

 公務用のドレスは既に脱ぎ、柔らかな色合いや素材のものに着替えている。煌びやかな宝石類は避け、装飾は簡素なデザインの耳飾りのみ。


 自身の金髪に乱れがないかを確認する。普段から手入れが行き届いているが、今日は特に丁寧に櫛を通し流れるようなウェーブを意識する。

 ごく自然な薄化粧は素顔に近く、血色が良く健康的に見えるように施した。

 花のようなほのかな香りで、不快感を与えない香水を少量使用した。


 二十一になった成人として、年上の包容力を活かした魅力を引き出す。


 扉が数度、ノックされる。


「どうぞ」


 若干の緊張を喉に帯びながらも、努めて平静を装った声で返した。


「来たぞ、レリーヴ」


 赤眼に赤髪、その身に太陽の欠片を宿したように全身から生命力に満ち満ちている彼――ルーチェ・ソムニア=インシューゼンは、入室するなりぞんざいな口ぶりで告げた。

 謁見の間での服装から質素なものへ着替えていた彼は、口元から覗く白い歯が歳相応の眩しさを秘めていた。


「お待ちしておりました。勇者様」


 八つも歳の離れた少年に躊躇いなく、うやうやしく私は頭を下げた。金色の豊かな髪が、顔の横で僅かに揺れた。碧眼を閉じて挨拶した私に、彼は口を尖らせるようにして告げた。


「そんな堅苦しいのはやめてくれ」

「たまにはいいじゃない、ルー君」

「なんか、やだ」


 短く返した彼は、他人行儀で出迎えた私に、拗ねるような言葉遣いだった。

 額を上げ、ふっと口元を柔らかくすると、頬の強張りはたちまち消えた。

 彼の眼も穏やかなものとなった。


「お帰りなさい」

「ただいま」


 手を引いて、抱擁する。微かに香る汗の匂いが鼻を衝いた。私よりも頭一つ分小さな彼は、包み込むようにしても受け入れてくれ、背中に腕を回してくれる。

 繊細な陶器に触れるように優しく抱き返してくれる少年の成長を、肌身で感じる。


「今回の旅は、どうだった?」

「けっこう、大変だった」

「珍しいね。そんなこと言うなんて」

「色々あったんだ」

「いつも通りだね。聞かせて」


 先ほどまでとは打って変わって砕けた口調のルー君は、幼少期からの顔見知りであり、命の恩人だ。私と二人きりか、旅の仲間たちにしか、このような話し方にならない。


 彼のがっしりとした手に指を絡ませ、二人でベッドに座る。靴を脱ぐように促し、私は寝具を軽く整えるようにして、その上に脚を折って座る。柔らかな反発を臀部で捉えながら、彼に両手を広げる。


「ほら、おいで」

「ん」


 招きに応じて、ルー君は子猫が身体を横にするように寝転んだ。私の太股に頭を預け、微調整を繰り返して心地の良い位置を探した。活発な印象を与える短く刈り込まれた毛先が、最近では肉付きが良くなった太股をくすぐるようだった。


「前回って、どこまで話したっけ?」

「魔王軍幹部の一人と戦っている時に、戦闘の余波で古代の機械生命体が目覚めて、共闘したって言ってたよ」

「そうだった。それじゃあ、泥骸竜に襲われたところからだな」


 私の膝上に頭を乗せる彼は、歌うように語り出した。

 相槌を打ち、硬く少し剛毛な髪に右手の指を通す。一本一本の毛を確かめるように丁寧な手つきで撫でる。左手は、瑞々しい左頬に触れる。無事を確かめるように、優しくさする。


「魔塔での戦闘を終えて、近くの街で休息を取っていたら、突然周囲が騒ぎだして。俺たちも慌てて外に出たんだ。そしたら、魔塔ぐらいでっかい竜が、遠くに見えた。街に防界幕陣を張って、装備を整えて……まだ疲れが取れてなかったから、追い払うことだけを考えたんだ」

「無事に守れたんだね」

「何とか。ゲンダルクが身を挺して守ってくれたから反撃できたけど、本当にギリギリだった」

「街の人たちは大丈夫だった?」

「もちろん。一人だって怪我させなかった」

「……お疲れ様。無事に帰ってきてくれて、嬉しい」


 両手を彼の両頬に添えて、覗き込むように顔を近づける。上下反転した状態で観察すると、前髪に隠れた新しい傷痕を額に発見する。軽く指でなぞるようにして、小さく息を吐く。



 彼が問題を引き込むのか、問題が彼を好き好むのか。

 冒険者のルー君は戦闘に暇がない。ある時は街を脅かす魔物の討伐に向かい、ある時は国家の政変に巻き込まれ、またある時は魔王軍との戦争に赴く。


 天が試練を、世界が苦難を少年に望むかのように、彼の英雄譚に暇はない。


 この手の中にある十三歳の若者は、大いなる宿命と大勢の期待が背負わされている。


「ルー君の活躍はいつだって耳にするよ。この国に限らず人々を助けてる」

「俺は冒険者だからな」

「無理をしてもいいけど、無茶だけはしないで」

「あまり心配するな。俺は強い。レリーヴのもとに必ず帰ってくる」

「……うん、わかってる」


 真っすぐに、真っ向から、見つめ返される。

 信念と意志を緋色に宿す彼に、それしか言えなかった。


「それで、その後は、街で、休んで、」

「いいよ、寝ちゃっても。起きたらまた聞かせて」

「……わかった」


 純金を塗りつけられたように重そうな瞼をゆっくりと閉じた少年は、ほどなくして寝息を立て始めた。穏やかに眠る頭を、撫でる。やがて、朱い毛先を弄び、活力に溢れる肌や頬を優しくつっつく。新調されたドレスの感触を確かめるように、指先に神経を集中させる。


 出会った頃から私の膝枕で寝ることを好んだ彼は、旅先の宿舎や野営での睡眠では満足に疲れが取れないのだという。他の者の膝でも意味がないらしく、だからこそ、人目を忍んででも会いに来てくれる。


 どのような寝具であろうと私の太股には敵わない。それほどまでに居心地が良いと認識されているのは喜ばしいが、それはつまり、彼は万全の状態にない中で戦場に赴いているのだ。


 ここは、王女の私室でありながら、少年の休息用空間だ。信頼できる侍女以外に、このことは知られていない。誰かが踏み入って来ることもない。

 せめてこの時だけは、心からの安寧に身を委ねて欲しい。




 夢へと旅立ったルー君は、まだ幼さを残した少年だ。


 ふいに鼻を軽く摘まみ、頬へ指の腹を押し当てる。彼の呼気が、かすかに乱れる。


 ふふ、可愛い。



 いつだって、私は待つ側だ。彼の小さな背を見送り、笑顔を携えて帰還する日を待ち侘びる。

 王国への報告義務として訪ねてくれるが、月に一度しかこうしたやり取りができない。長い時には数ヶ月も会えないこともある。その間も手紙を介して連絡を取り合えるが、やはり生身で触れ合える嬉しさは別格だ。


 大勢が注目し、そして期待する若き勇者を、この時だけは独り占めできる。






 この世界には人々に害をなす悪しき魔物が蔓延り、その者達を統べる王が人類の生存圏外から侵攻を繰り返している。魔法と呼ばれる超常的力を奮って対抗する人間は、各国の兵とは別に冒険者が存在する。


 立場や矜持を弁えて国家の要請に応じ、人類共通の敵へ剣を振るう。しかし、中には横暴な態度を取る者も少なくない。恩を笠に着て無銭飲食を繰り返す者、危機を救った見返りとして下卑た要求をする者など後を絶たない。


 国家の兵隊が盾とするならば、彼らは人類の矛であり剣だ。国が専有の実力者を囲うことも往々にしてあり、ルー君とその仲間たちはこの国の専属冒険者だ。

 名目は専属だが、他国の要請に応じて派遣することも多い。


 ルー君とその仲間たちの名は轟いており、国境を越えて遠征する彼らは、いつしか人類の希望とまで称されるようになった。

 一層の激しさを増す魔王軍との戦において、欠かせない存在となっている。



 いつかは魔王を。

 口にしないまでも、大多数がその願いを共有している。彼が道半ばで倒れるような想像は、誰もしない。


 確かに彼は強い。この世界でも指折りの実力者だろう。

 しかし、折れぬ剣はない。折れぬ矛はない。強者と謳われた人物が風に吹かれた土のように命を散らすことは珍しくない。


 熟睡する少年が、その一員にならないとは限らない。

 私は、そんな不安をいつだって胸に秘めている。

 この心配は、どうしたら解消されるのだろうか。






 *







「レリーヴィル様。勇者様御一行が到着されました」

「謁見の間にお通しください」


 王城の演習場にて魔法の訓練中だった私は侍女の言葉に汗を拭い、廊下に出た。城外の騒々しい声に惹かれるように窓へ近づくと、眼下では祭りのような様相が広がっていた。 


「ルーチェ様~~!!」

「人類の希望! 我らが救世主!!」

「ルーチェ!! ルーチェ!!」


 歳に見合わない精悍な顔つきの勇者は、人で作られた道を歩いていた。

 周囲へ向け軽く手を振り笑顔を浮かべる少年に、民衆の熱は高まる。特に、若い異性の視線が集まっていた。


「勇者様~~! こっち向いてーー!」

「私も連れてってー!!」

「配下にしてー!」

「お世話させてー!」

「姉にしてー!」


 黄色い声援が、また増えたね。変な言葉も聞こえた気がするけれど。


「今朝の騒動、城下町の外れに現れた魔物の討伐も、彼らがしてくれたって?」

「それは嘘よ。彼らはそのとき、まだ王都へ着いていなかったって」

「だとしたら、他の冒険者の方かもしれないわね」


 背後で私語を交える侍女たちを聞くともなく、私は話題の人物たちを窓越しに見下ろした。

 先頭を歩くルー君、その後ろには彼を支える仲間たち。

 生々しい傷跡を全身に刻んだ大柄の男、玄斬武闘術を修めたルー君と同年代の少女、身体の半分ほどもあるとんがり帽子の女性。全員が、その実力と覇気を纏わせていた。


 まだ成長途中にある小さな身体で、竜さえ屠った実績を持つルー君は注目の的だ。

 各国では縁談の話が上がっていることは耳にしている。依然として彼が全てを断っていることも把握している。


「レリーヴィル様。ご準備を」

「ええ。急ぎましょう」


 汗をかいた身体を綺麗にして、正装を纏っておかなくてはならない。








「ただいま」

「お帰り、お疲れ様」


 十数分ほど前に戦果報告を終えたルー君は、早々に扉から現れてくれた。柔和な笑みを浮かべた私は早速彼をベッドの上に連れて行った。為すがまま横になった少年の頭を膝の上に乗せ、燃えるような赤髪を撫で出す。


 予定より二週間も早く帰ってきた彼は、雄弁に冒険譚を聞かせてくれた。

 魔王軍の侵攻に劣勢を強いられていた国への道中、雪山で想定外の邂逅を果たした敵の将軍を撃ち果たし、勢いのままに敵軍を壊滅させた話。救った国の周辺で遭遇した、謎多き森林巨人の足跡。帰路の船では、海の底から湧いて現れた水竜の群れと激闘を繰り広げた。


 まるで絵物語を読んでいるような話に、赤毛を弄りながら思わず息を呑んだ。


 話に区切りがつくと、王都での話に移った。魔物や他国についての話題はルー君、王国での出来事は私が語る役割だ。

 伯爵夫人の毒殺未遂、武具屋で発生した盗難事件、人々の夢に現れた魔物の退治、不可視の冒険者など、この国でも様々な事件が日々起こっている。


「王都でも噂の冒険者、どんな奴なんだろうな」

「私も、聞いたことはあるかな」

「強いなら勧誘しようと思ってるんだけどな、なかなか会えないから」

「見つかるよ、多分」

「国王陛下も、呪いが解かれたって?」

「頑張った。私が」


 純真な眼差しで褒めてくれる彼に、ちょっとだけ照れ臭くなる。

 お父様に掛けられた呪いは数日前に解け、現在は歩けるほどにまで回復した。あと一カ月もすれば、また以前のような壮健な姿を民衆の前に表すことができるだろう。


「この国の防護障壁を張り替えたとも聞いたぞ。これまでの戦いで綻びが出たところを直すために」

「うん。国中の魔法使いを集めて、以前の十倍は強固な障壁が構築できたの。これなら、万を越える敵軍に攻められても、一年は持つよ。今は籠城用の食料を保管する場所を皆で作ろうとしているところ」

「王都に活気が戻るわけだ。レリーヴは凄いな」

「まあ、王女だからね」


 倉庫にしても、既に完成までの見通しはできており、あとは実行に移すだけである。

 少し自慢げに口角を上げた私は、彼の髪を指で軽くつまむようにした。


 今日は短めの三つ編みに挑戦してみようかな。部分的に三つ編みになったルー君も、きっと可愛いはず。


 そして数十分もすると、これまでと変わらず彼は眠りに落ち、全身の力を抜いた。

 撫でていた彼の頭を両手で支えるように軽く浮かせ、ゆっくりと太股を抜いていく。緩慢な動作で少年をベッドへ移すことに成功し、私も隣に横になる。


 呼気に合わせて胸を上下させるルー君は、こうなると一時間は起きない。肩を掴んでゆすってみようと、耳元で大きな音を立ててみようと、全然起きない。緊張を纏っている時には奇襲などに備えて眠りを浅くしている反動で、蓄積された疲労はこの時を狙って少年を鎖で縛る。


 むしろ、日々の疲れがたった数時間深く眠るだけで全快する方が不思議だ。彼が成長途中の少年とはいえ、異様な回復力に思える。この肉体強度なしには生き残れなかった、と捉えるべきなのかもしれない。


 ともかく、今この瞬間。

 勇者や希望の肩書を下ろした彼を、私だけが見ていられる。


 じっと観察する私に、少年は無防備を晒している。戦場では命取りになる油断を見せている。


 睫毛にかかりそうな前髪を、手の甲でそっと払う。室内に響く深い寝息を前にして、しばらく見つめていた。




 簡素なシャツの袖をおもむろに捲ると、何度も背中に回してくれた腕が現れた。激闘の跡を物語る切り傷や刺創、噛み傷に、指を這わせる。


 腕、太くなったなぁ。


 五年前は軟骨すら確認できるほど細かった腕は、今や筋肉の隆起で骨格が覆われ、雄々しさを増していた。



 静かに身体を起こして、彼の下半身へ目を向ける。

 ズボンの裾を膝裏まで捲ると、骨太な脚が現れる。そこでも、いくつかの小さな傷痕が散見された。


 七年前は、転んで擦りむいただけでも私に抱きついて泣いていたのに。


 活発さを発揮して登った木から落ちて、骨折していた頃が懐かしい。幹に枝葉をつけた大樹のごとく成長した足は、他者を助けるべく動かされるものとなった。



 粗暴なイメージの先行する冒険者の中では、彼はまだまだ細身の方だ。それでも、日に日に逞しさを増す様は頼もしく映り、それでいて一抹の不安が拭い去れない。


 まだ、十三を迎えて間もない。この年頃でも働きに出る子供は珍しくないが、この少年ほどの重責を担っている者がどれほどいるだろうか。



 手慣れた手つきで服をめくり、少年の腹部を露わにする。


 誓って、寝込みを襲うつもりはないことを宣言します。

 そのような暴挙には出ません、ルー君の信頼を裏切りたくないから。



 これまでの触診による観察も、ひとえに彼のためだ。潜伏した怪我の有無や敵の魔法による健康への異変が起きていないか。仲間や他の冒険者に外傷は治されているだろうが、万が一見逃したものがあれば大変だ。

 そう、これは。純粋な愛情と懸念、そして成長への関心によるもの。


 断じて、引き締まった肉体に興奮はしていません。ドキドキするだけです。



 顔に見合わぬ鍛え上げられた腹筋に、私は掌を優しく添えた。まるで磨き上げられた小石が縦横に連なっているようで、荒々しい世界で生き抜く少年の努力の結晶だった。


 顔を近づけていき、頬をくっつける。巨岩を彷彿とさせる筋肉へ、頬ずりをする。

 戦闘の衝撃に耐え続けた薄い鉄板のごとく、密度が高い。成人男性の鍛錬された肉体とはまた異なる。成長途上の鎧だ。


 私の挙動に少年は身じろぎもせず、ただただ温かい体温を返してくれる。この体躯は、危険な生物と対峙し、戦において磨かれた、いわば研磨の過程にある宝石だ。



 歳の離れた友人のように慕い、弟のように甘えてくる、いつ何時も愛おしい存在。


 時折見せる幼い表情と、命飛び交う世界で生きる冒険者の顔を併せ持つ。

 その二面性が私の庇護欲をくすぐり、愛情を深化させる。

 少年の存在は、心の拠り所だ。


 彼は今、どんな夢を見ているのだろうか。私が登場していてくれると嬉しいものだ。







 *






「帰ったぞ。レリーヴ」

「ルー君!!」

「ぉわ、」


 窓から颯爽と現れた彼に、飛びつくように抱きつく。


 輝きを失い乾いた髪を振り乱し、目の隈や青白くくすんでいた肌を意に介さずに彼を強く抱擁した。震える指先が伝わったようで、少年も動揺を顕わにした。


「心配した」

「生きてるよ」

「心配したんだから」

「ごめんって」

「本当に心配したんだから!!!」

「わかったって」


 彼をベッドへ押し倒すようにして涙ぐんだ私は、彼の体温を確かめるように密着した。



 勇者一行は強敵との激闘の末、三か月もの間行方不明だった。



 必ず無事でいると信じていたが、日が経つにつれ私は周りに隠せないほど憔悴していた。


 国が見えると、ルー君は仲間に一言告げて空を飛び、一足先に会いに来てくれたのだ。


 いずれ仲間たちが城門に辿り着けば、歓声がここまで届く。ルー君の姿がなければ国中が騒然となり、そしてこの部屋に押し掛けようとする者達がいるだろう。


 そんなことは頭から消え去っていた私は、彼の肩に額をこすり、顔を伏せたまま、少年の生還を全身で感じていた。


「探しに行こうと思ってた。捜索隊だって何度も派遣して」

「敵の魔法で別の大陸へ飛ばされたんだ」

「私だけでも見つけに行こうとしてたんだから。旅用の袋も、そこにある。明日出発するつもりだった!!」

「王女が何してるんだ」


 とにかく、彼が無事でよかった。亡霊ではないことを確かめるように、私は再度腕に力を込めた。抱き返してくれた彼の腕は、変わらない優しさを乗せていた。


「ルー君……! ルー君…………!」

「ただいま」


 恥じらいもなく泣きわめき嗚咽を漏らした私は、見るに堪えない姿だった。

 だが、どうでもよかった。


 飾った私も飾らない私も、生きていた彼は受け入れてくれるのだから。




 ひとしきり彼の胸を濡らしたところで、落ち着きを取り戻した私は、月日と共に厚くなった胸板に頭を乗せたまま、ルー君を見上げた。


「私、君についていく。旅に同行する」


 彼は、僅かに瞼を細めた。


「大変だぞ」

「訓練は欠かしてない。私の魔法なら、君の助けになれる」

「レリーヴの回復魔法は高度だ。俺たちの支援にはうってつけだ。だが、それだけでは駄目だ。体術はどれくらいだ?」

「騎士団長を倒せたぐらい。魔法使わずに」

「……あのおっさんには、俺も滅茶苦茶苦労したぞ」

「お父様が快方したから、私が表立って政務をやる必要もなくなった」


 二十歳を迎える頃には、私は魔法の才で父を超えていた。人を癒す魔法が得意だった。

 戦時の立ち回りや判断力、身体能力は、戦場において後れを取ることはない。その自負がある。


 この数ヶ月、覇気を取り戻した父が国の統治に勤める中、私はもはやなすべきことがなかった。王女一人が居なくなろうとも、優秀な人材が国を支えられる。


 それに、彼にはまだ教えていない事がある。


「前に言ってた、王都で噂になってる人。私見たことあるよ」

「俺が勧誘しようと思ってたやつか? そんなよく目にするのか」

「この国の人たちは、皆一度は目撃してると思う。ルー君は何度もあるよ。私なの」

「…………え?」


 以前に侍女たちが話していた城下町外れに出現した魔物を討伐したのは、私だ。

 政務の傍らで、これまで幾度となく魔物を倒してきた。単独の機敏性を活かして誰にも目撃されず、こなしてきた。魔物の遺体だけが残されたことから、『不可視の冒険者』という噂が流れたのだ。このこともまた、信頼できる侍女と父親しか知らないことだ。



「王家の教育で培った知識と、魔物との戦闘経験も豊富。礼儀作法はもちろん、他国への顔利きもできる」

「それなら、まあ」

「これからよろしくね」

「……ああ、よろしく」


 簡潔に説明を終えると未だ驚愕に揺れていたが、彼は小さく頷いた。

 押し切った形になるが、たとえ何といわれようともついていくつもりだった。

 彼と仲間たちを探しに行く準備をしていたおかげで、今日にでも出発はできるくらいだ。



 彼のために動ける時が来た。同じ冒険者として、隣に立てる。


 もう、不安に押し潰されそうな中で待つのは、嫌だから。





 …………そうだ。待っているだけでは、駄目なんだ。


 うずめていた顔をバッと上げる。目を見開いた少年の顔横に両手を置いて、自分の身体を支える。端正な顔立ちを縁取るように、パサついた髪が耳を通り抜けて流れた。


 そして、ぐっと顔を近づける。

 真紅の双眸が、私で埋め尽くされていた。


「私。もう、二十一歳だよ。縁談は沢山来てるけど、国防を理由に断ってる」

「俺は十三だ。他国へ出向くたびに近寄ろうとしてくる者がいる」

「仲間の人たちは。同い年くらいの子がいるよね」

「気の置けない良い奴らだよ。良き同僚だと思ってる」


 同僚。本当にそう思ってるんだ。あの、武闘家の少女が、自分を見る目を知らないんだ。


「ルー君、年上の女性ってどう思う? ……私の事、どう思ってる?」


 遠回しに伝えようとした。考え直して、率直に尋ねる。


 尋ねみるが、口を噤んでしまう。血色の悪い肌の熱が、急激に上がった。煙が出そうなほど、身体の血管が脈打っている。

 赤面を隠せなかろうと、なりふり構わっていられない。この数ヶ月の絶望は、それほどまでに私を追い詰めていた。


 問いかけに、彼は沈黙していた。


 外からの歓声が、窓を揺らしていた。少年のメンバーが、国に帰還したと広まったのだ。時を置かずして、侍女たちがここへ殺到してくるに違いない。


 それでも、私達は、お互いを見つめていた。

 真顔で、じっと。外の喧騒など意に介さず、目線を逸らさない。



 一秒か、一時間か。ふいに、彼の口が開かれた。





「結婚するか」

「……………………んえ?」



 んえ? え? ええ?


 平坦な声音で、その言葉は唐突に投げられた。何のけない様子で言われて、間の抜けた声が漏れた。眉がわずかに曲がり、全身の毛穴が開くような衝撃を受けた。


 耳を疑った。まさか、これは夢ではないか。目覚めると朝日が差し込んできていた、などと現実に引き戻されてしまうのでは。


「結婚しよう。レリーヴ」


 聞き間違いではない。下にある顔は、紛れもない現実の本物だ。それに今は朝だ。一足飛びの返答、その両眼は、私を見据えていた。

 上体を起こした彼は、私の両手を掴み取り、指を絡めてきた。


「お、ちょ、ま、ええ」

「ずっと、待たせた。背丈を超した時に伝えようと思っていた」

「あ、え、」

「だが、悠長に待ってもいられない。俺の些細なこだわりなど、捨ておく」

「お、おお」


 ずい、ずい、と。顔を近づけてくる彼に戸惑い、慌てて下がるようにすると、なぞるようにして少年も身を寄せてきた。ベッド上での求婚に、動揺が収まらない。


「まだ頼りない俺だが、これから大きくなる。強くなる。貴女を守ってみせる」


 真剣な面持ちに、嘘偽りはない。咄嗟の言葉ではなく、積乱雲から降り注ぐ雨粒のように、私を貫く。


「いいの? いいの? 私、君より、八個も歳上だけど」

「時の功績は、レリーヴを美しく育てたこと」

「……私のこと、お姉ちゃんぐらいにしか思ってないかと」

「姉のように慕い、歳の離れた友人のように頼っていた……一目で惚れていたんだ」


 えええ、そんなに想われてたの!? 


「け、結婚なんて、まだ。まずは婚約からかと」

「婚姻を前提に、婚約しよう」


 眩しいぐらいの圧が、戦闘で培われた気迫が、私の理性を破壊しようとしていた。


「娶って、くれる?」

「貴女としか、結婚を考えていない」

「お、えお、ふへ、うへ」


 気品の欠片もない、だらついた口元から涎が零れてしまいそうだった。


 やがて、あることに気づいた。


 赤毛に隠れていた彼の耳が、異様なほど紅に染まっていた。その熱が移るように、柔らかい頬まで紅潮している。瞼が微小に揺れ、両手には震えが伝わっていた。


 雷撃が胸を貫いた。鼓動が早まり、吐息が荒くなり始める。



 いいんだよね? これってもう、手を出していいんだよね? 


 息が、荒くなる。粗くなる。アラクナル。


 いや、待って。待ちなさい、レリーヴィル。

 こんな純粋な目を向けてくれる彼を、邪な欲で蹂躙してはならない。

 ここは我慢、我慢よ。


 深呼吸。両手掴まれたままだけど、呼吸、呼吸。

 ごつっとした掌の感触が、包み込まれる幸福が、口端をだらしなくさせているけど。

 そう、私は年上なんだから。包容力で、貫録を備えた姿勢で、受け入れてあげないと。


 取り繕っても手遅れどころの話じゃないけど、彼の頼れる姉として、未来の妻として。冷静沈着に、貫録と風格を纏わないと。



「レリーヴ。俺とは、嫌か?」


 小首をかしげ。緊張を内包した瞳で、私を上目遣いに見つめてきた。


「今すぐ結婚しよう! お父様に会っていって!!」


 そんないじらしい顔をされたら、理性が、理性が……理性って、必要かしら。


 彼の手を握り返し、再度ベッドに押し倒す。重ねている両手を広げるようにする。乱心したような年上の女に、少年は僅かな戸惑いを滲ませながらも、声すら上げない。


 段々と、鼻息まで乱れてきた。

 好物を目の前に吊るされた猛獣のごとく目が血走った私は、柔らかなそうな唇を前にして喉を鳴らす。


 彼からの求婚、そして承諾。お互い同意は得ている。


 貪るようにしても、問題は無い。



「きゃあーーーー!!! 勇者様が襲われてる!!」

「レリーヴィル様!? あ、あれはレリーヴィル様なのですか!?」


 そこで、私はハッとなった。


 開かれた扉からなだれ込むようにして入室してきたのは、侍女たちと現国王陛下、つまり私の父だった。


「レリーヴィル…………お、おま、お前は何をしている!!!」


 彼らは、朗報を伝えに来てくれたのかもしれない。

 消息を絶っていた勇者一行の無事が確認され、熱狂に渦巻く中、数ヶ月にわたって無気力だった私に希望の知らせを持ってきたかったのかもしれない。


 ただ純粋な厚意を携えて王女を立ち直らせるつもりで駆けてきた。

 ルー君が仲間たちに先駆けて王城の、それも私の部屋に来ていたとは知らずに。


 そして、第三者から見れば、私たちの体勢は明らかにまずい状況だった。


 少年の上に乗り上げた王女が、彼の両手を掴んで覆いかぶさり、上気した顔で荒い息遣いを漏らしながら迫っていた。


 誰が見ても、問題しかないような絵面だった。












「皆様、長く険しい旅から生還されたこと、喜ばしく思います。国を代表して、心より御礼申し上げます。そして、私事ではありますが。このレリーヴィル・デ・ロコダット、本日より皆様の戦列に加わらせていただきます」


 午後。王城の控えの間に招いたルー君の仲間三名に、私は頭を下げた。


「そういうことだ。皆、よろしく頼む」

「ええええ!! どういうことよ!」

「これは、いかがしたものか」

「あら、いいんじゃない? ルーチェの話だと、お強いんでしょう?」

「前衛での戦闘から後方支援まで、また国家間交渉事など、全てお任せください」


 少女、男性、女性と反応は様々だったが、気後れせず告げた。ドレスに着替え、魔法によって以前までの活力を取り戻した肌は、張りと艶が満ちていた。


 その場には隣で腰掛けるルー君の他に、数名の侍女たちがいるぐらいだった。


「装備はどうなさるので? ドレスでは少々難しいかと思われますが」

「そ、そうです! そうですよ! 旅は甘くありません!」

「ご安心を。既に国有数の職人に手配済みです。明日の明朝には旅に適した服装が見繕われているでしょう」


 厚手の茶色の革製チュニックと動きやすい丈夫なズボン。肌を守るためのチェストガードと長距離に適した固いブーツ。どれも、職人の手掛けた簡素ながらも耐久性と機動性に優れたものだ。腰には使い慣れた片手剣を吊るし、豪華な装飾は一切ない。必要になれば国から送ってもらうが、飾り立てるためのドレスや宝石は旅路に必要ない。


 全体の印象だと、ルー君とお揃いの出で立ちになる。



「は、反対します! 申し訳ありませんが、王女様に傷でもつけたら私達処刑になってしまいます!!」

「怪我など私は恐れません。百に群れる魔物へ単身で突撃したこともありますので」

「本当に王女なんですか!?」

「魔力量も、私と同じくらいか、それ以上あるとお見受けします」

「歴代でも私は一、二を争うほど誇れます。これを活かした回復魔法が得意です。それと、私に敬語や敬称は不要です。志を同じくする者として、対等に扱ってください」

「あら、柔軟な方なのね……歓迎するわ、レリーヴィル。私達に欠けていたメンバーだもの」

「俺も構わない。今まではルーチェスがチームの回復まで担っていたからな」

「ありがとうございます。皆様の足を引っ張らぬよう、誠心誠意努めさせていただきます」



「ぐ、く、いや、まだよ。レリーヴィル様はルーチェを見る目が……いかがわしい目つきをしています!!」

「下心なんてそんな……少ししかないです」

「反対反対!! 断固反対!! ていうか、なにしれっと腕組んでるんですか!」

「そう申されましても。私たち、婚約しましたから」

「「「 え 」」」


 異口同音に、彼らは目を丸くした。


「ね? ルー君?」

「今日の夜に、生還を祝したパーティーがある。そこで発表されるだろう。それで、次の目的地だが。西の砂漠街を目指して舌丞将軍と呼ばれる奴が大軍を率いている。明日の午後には出発しようと思う」

「ちょ、ちょっと待ちなさい! 一から、一から全部説明しなさい!」

「舌丞将軍は、その舌の回り具合で国を惑わし、内乱を起こすと言われている」

「そっちじゃないわよ!」

「俺も、一応は聞いておきたい」

「フフ。なんだか急展開ね。楽しくなってきたわ」


 この人達とは上手くやっていけそうだ。そう強く感じた。ルー君の仲間ともなれば、それは当然かもしれなかった。



 ルー君との一幕を目撃されたため、私はお父様から小一時間ほどお叱りを受けた。侍女たちによって距離を取らされたルー君が経緯を説明すると、ようやく状況を理解してくれた。なおさら叱られた。



 結婚と冒険者の旨を伝えると、お父様と侍女たち全員に、溜息をつかれた。


 まず第一に、国の法律では結婚可能年齢は十五歳以上と定められている。ルー君と式を挙げるには、あと最低でも二年は待たないといけない。法律を変えようと提案したが、お父様に睨まれて渋々撤回した。


 婚約は可能であり、今日の夜には正式な声明が出される。本来は諸々の準備が必要だが、眼光鋭く魔力を漲らせた私は押し切った。


 今頃、謁見の間でお父様は額に手を当てているのかもしれないが、知ったことではない。


「レリーヴィルは積極的なのねぇ」

「積極的なんてものじゃないわ。肉食よ。ルーチェを襲おうとしたってことでしょう?」

「襲おうなんて、そんな、誤解です。ただ唇を奪おうとしただけで」

「何も違わないじゃない!?」

「ルーチェが、そうか。めでたいな。祝福しよう」

「ルーチェ! 貴方、誘惑魔法でも掛けられたのよ! そんな魔法があるのかしら? そうよね?」

「そうだな。幼少の頃から掛けられていた。これからも変わらない、生涯そうだ」

「ルー君……!! 皆さん。魔王を倒しましょう。二年以内に潰しましょう。人類の未来と、私達の式のために!」

「動機が欲まみれ!!」


 少女の叫びが木霊する中、彼に腕を絡めて、私は甘えるようにくっついた。


 正式な結婚までは、あと二年。ルー君が十五歳になるまで辛抱するだけだ。


 二年くらいなら、待ってみせる。






 *






 あれから、季節が巡った。


 私の膝枕を摂取できるようになったルー君は、課題であった不眠状態から脱却し、それまで以上の力を引き出した。また、肉弾戦からメンバーの回復まで幅広くこなす私の立ち回りにより、チームは勢いに乗って世界を渡り歩いた。

 劣勢にあった国々を救うどころか魔物の軍勢を蹂躙し、立ちはだかる敵を打ち破った。


 遂には魔王を打倒するまで、一年半を費やした。


 その後、半年あまりを活用して世界中の復興を果たした私達は、民の喝采を浴びて王国へ凱旋した。




 そして、今日。天の微笑みが降り注ぐ快晴の下、私達は挙式した。

 参列者には旅をした仲間たちにお父様、各国の来賓など、国を挙げての催しとなった。


「ルー君」

「ん、どうした」


 隣の彼を見上げる。ここ二年で、少年は私より僅かに背が高くなっていた。

 細身だった体躯は厚みを増し、公務用の服の上からでも鍛え抜かれた鋼の筋骨が想像できる。


 もはや青年と呼ぶ方がふさわしいルー君の顔つきは、数多の戦いを経て深く精悍さを増し、あどけなさは消えていた。特に、その真紅の瞳は苦難を乗り越えた者だけが備え持つ、揺るぎない光を湛えている。


 しかし、私にとってはいつまでも少年のような心をその眼に宿している。


「私、今。すっごい幸せ」

「まだ、幸福の門出だ。これから俺たちの旅は始まる」

「うん……疲れたら言ってね。私の太股は、君だけの枕だよ」

「……今日は、特に頼るかもな」

「ふふ、そうかも。私は準備万端。安心して寝ていいよ」


 顔つきが大人へと変わりつつある彼は、耳先を赤らめ出した。目線を逸らすようにしても、掌の温度が、私の唇を緩ませる。


 どれほど恰好良くなろうと、この可愛らしさ、愛おしさは不変だ。

 思わず口づけしたくなるが、まだこらえなければならない。



 夫婦になって、初めての夜。何者にも邪魔されない。

 これまで抑えていた理性を解放する。



 八歳も年下の彼は、今日も私の太股でよく眠るだろう。









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歳の差カップル、二弾目です。

  

前半と後半で雰囲気がガラっと変わってしまったような気がします。


書いていて楽しかったから、まあいいかなと。


他にも短編や連載を書いています。是非是非そちらもどうぞ。ギャグテイストは大体同じです。


六、八と来たので、次は十歳差かなーと思っています。まだ何も考えていませんけれども、とりあえず書いたら投稿します。



ではまた、次の作品で。


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八歳年下の彼は、太股でよく眠る ~人類の希望は私の枕がないと全快しない~ 蛇頭蛇尾 @hehebi

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