神に近づいた男

高菜チャーハン

今日もお祈り、明日も神

俺は、どこにでもいる平凡な大学生だった。


だが、ある日、俺は突然、人々に祈られるようになった。特別なことをした覚えはない。なにか偉業を成し遂げたわけでもない。それなのに、なぜこれほど多くの人からひたすら祈りの対象にされているのだろう――。俺は、その奇妙な現象に戸惑うしかなかった。


俺は、この謎を同級生に打ち明けてみた。

「なあ、俺ってなんでこんなお祈りされるんかなー?」

友人は顔をしかめて言った。

「うーん。お前、普通だからな。そんなに祈られるのがちょっと信じられないんだけど。ま、色んな人に相談してみると良いよー」


同級生にも聞いてみたが、どうやらこんな現象に陥っているのは、俺だけらしい。

今日もまた、メールで俺は祈られた。


もう何通も、何十通も、こんなメールが俺に来ている。さすがにもう神にでもなれるんじゃないか――なんて現実逃避をしながら、俺は、もう何通目かも分からない「あなたは不採用です。今後のご活躍をお祈りします。」というメッセージを眺めた。


「次、どこ受けようかなー」


俺は、無力なまま、天井を見上げるのだった。





【作者あとがき/補足】


この物語で登場する「祈りのメール」とは、就職活動における「不採用通知メール」の俗称です。


多くの企業が、不採用を伝えるメールの結びに「〇〇様の今後のご活躍を心よりお祈り申し上げます」という定型文を使用することから、就活生の間で広く使われています。


主人公の彼は、その社交辞令の「お祈り」を、壮大な「神への祈り(神格化)」だと真剣に勘違いしている、という設定でお楽しみいただければ幸いです。


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