隠世の海
青時雨
其処は隠世
其処は隠世
三途の川を渡ると、そこにはまっすぐとひとつの道が続いている。触れればひんやりとしていそうな石畳の敷かれた、緩やかな坂道。
迎えるのは、
それは確かな絶景であるが、道を逝く亡者たちの瞳はどこか空虚で、其れに目を留めることはない。
ずっと向こうまで続く木々一本一本の間、其の
石畳の道を歩くこつこつという子気味のいい音も、風にさざめき散りゆく花も、炎の気配も確かに存在している。だが、ここは現世と分かたれた世。
目を塞ぐ両手の
道は変わらず先まで続いているが、景色は一変。左手には浅緑色の海が広がり、遠く向こうには浦山が望める。一方右手には濃霧がかかっており、朧気だが僅かに険嶺が見えるだろうか。見上げれば、灰がかった藤色の遠い空が我関せずと此方を見下ろしている。
浦山の麓には朽ちることのない石造りの鳥居が聳え、その先は神の領域である。山肌には神の住まう屋敷が点々と建っているのが、目を細めれば見えるかもしれない。
しかし、眩く光る来世が道の終わりにあり、大概の亡者たちは道から大きく外れた遠くの鳥居を見逃し、神々の存在にも気がつかぬまま来世へと旅立つ。
此処は隠世。
万物が
其処は隠世。
終焉と
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