コミック書評:『アノニマス米寿』(1000夜連続3夜目)

sue1000

『アノニマス米寿』

『アノニマス米寿』は、過疎化と高齢化が進む地方の静かな住宅街を舞台に、88歳の米沢トミヨ(コードネーム「TOMY88」)が活躍する意外性に満ちたハートフル・ハッキング・クライムストーリーだ。

20年前に夫を亡くして以来、一人で暮らすトミヨは、独学で身につけたハッキング技術を町の小さなトラブル解決に惜しみなく使う。

第一話では、配達ロボットの暴走をサーバをハッキングして制御し直し、配達遅延に困る住民を笑顔に変える。その鮮やかな手口が生み出すITミステリとしてのカタルシスと、コミュニティドラマとしてのぬくもりが見事に共存する。


さらに、本作では「TOMY88」が国際的ハッカー集団「アノニマス」の中核メンバーという大胆な設定もある。匿名フォーラム上で交わされる暗号のやり取りや、世界各地でのホワイトハッキング描写が散りばめられ、日本の地方を舞台にしながらも壮大なスケール感を演出。しかしトミヨの動機は一貫して「人のため」。グローバルとローカルを軽やかに行き来するスピード感とギャップが、この作品の真骨頂だ。


人間ドラマの側面でも光るのは、トミヨと同じ町に暮らす元警察官・佐倉源へのほんのりした想いだ。源はトミヨの正体を知らないが、折に触れて顔を合わせる穏やかなやりとりが、物語にささやかな彩りを添える。だが恋愛要素はあくまで脇役にとどまり、町を守るという共通の目的で結びつく二人の信頼関係がバディものとしての面白さも演出している。


作画面も高評価に値し、デジタル解析画面では緻密なコードのビジュアルが圧倒的な機械美を放つ一方で、田舎町の草花や四季折々の風景は温かなタッチで描かれ、ページをめくるたびに緊張と安らぎが自然に往復する。緩急をつけたコマ割りは読者を引き込み、次話への期待を絶妙に高める効果を生んでいる。


総じて、『アノニマス米寿』は、高齢化や過疎化といった地方の現代的課題とグローバルな問題という全く異なるレイヤーのストーリーを展開しつつ、老練な知恵と最先端の技術の融合が見事に描かれた稀有な逸品だ。

読了後には「知恵と勇気は年齢を選ばない」という力強いメッセージが心に響き、再びTOMY88のライフハックを追いたくてたまらなくなるだろう。








というマンガが存在するテイで書評を書いてみた。

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