第4話 タロウとの出会い!

 行く当てもなく荒野を彷徨うペロタンであったが、ペロタンも生き物、水分がなくては生命維持ができない。ペロタンは水を探すが、見渡す限りの荒野に水は見つからなかった。


 ペロタンは脱水状態におちいり、意識が朦朧としたその時、


「ワンちゃん、大丈夫かい?」


 年の頃10歳程の少年であった。

 少年はペロタンに声をかけ、彼は持っていた水筒から貴重な水をペロタンに飲ませた。


「い、生き返ったペロ・・・

ありがとうペロ。」

「わっ!犬がしゃべった!」

「ボクは犬じゃないペロ、ボクはペロタンだペロ。」

「まさか・・・ミュータント・・・」


 少年の目に一瞬、怯えの色が見えたが


「ミュータントってなんだペロ!?

だからボクはペロタンだペロ!!」

「えっ?君ミュータント知らないの!?」

 

 少年はペロタンがミュータントではないことを知って安堵したようだ。


 少年はペロタンの求めに応じて、現在の世界がどうなっているのか自らの知る限りをペロタンに教えた。


「なんだか大変なことになっているペロね。」

「うん・・・」


 その時、バイクの爆音が遠くから聞こえ、その音がどんどんと大きくなってきた。


「ミュータントのモヒカンの軍団だ!

早く・・・早くどこかに隠れなきゃ!」


 少年の顔におびえと焦りが明らかに見て取れ、隠れる場所を探して首をあちこちに振ったが、だだっ広い荒野にそんなところなどは存在しなかった。


「逃げてもすぐに追いつかれてしまう・・・

どうしよう・・・」


 バイクに乗った総勢20人程のマッチョなモヒカンの軍団が少年達の方に急速に近づいてくる。


 右往左往しているうちに、モヒカンの軍団はペロタンと少年の前に立ち塞がり、リーダー格の男が少年をジロリと見た。


「ククク、ちょうど人を殺したい気分だったんだ。

殺してやるぜぇ・・・」


 少年はおびえて震えるだけで動けなくなっていた。

 ペロタンは少年の前に立ち、


「少年、ここはペロタンに任せるペロ!

さあ、後ろに下がるペロ!」

「ペロタン!そんな小さな体で何ができるの!

ペロタン!君は逃げるんだ。」


 この小動物を守らなきゃという使命感が少年から体の震えを取り除き、少年はペロタンを押しのけてリーダー格の男に突っ込んでいった。


「うああーっ!」

「ククク、ガキが。」


 少年はリーダー格の男に軽く小突かれただけでぶっ飛び倒れ込んだ。


「ククク、じっくりいたぶって殺してやるぜ。」

「ペロタン・・・逃げ・・・

!!!」


 ペロタンは戦闘形態バトルフォームに変身していた。


「少年・・・汝の思い・・・受け取った・・・

我・・・今からゴミ掃除をせん・・・」

「ああ!ゴミだあ!?

誰に言っ・・・」


 リーダー格が言いかけた時には、ペロタンのパンチがリーダー格をミンチにしていた。

 そして、10秒後にはモヒカン軍団全てのミンチ処理が完了していた。


「ペロタン!すごいや!!」

「大したことではない・・・少年よ・・・

怪我はないか・・・」

「大丈夫・・・

・・・」


 少年はペロタンの顔をまじまじと見つめた。


「どうしたのだ・・・

少年よ・・・」

「ペロタン!もっと自分に素直になりなよ!!」

「・・・!!」


 ペロタンはギクリとした。少年の言ったことは図星だったからだ。

 本来のペロタンは戦闘形態バトルフォームの姿こそが本来の姿であり、口調ももっとワイルドであった。

 地球に合わせるあまりに、かわいらしい一頭身の体に擬態してみたり、語尾に“ペロ”だなんてぶりっ子してみたり、戦闘形態時には格式と重みを出すために仰々しい言葉遣いにしてみたり・・・

 少年はペロタンの無理をしている違和感を瞬時に感じ取っていたのだ。

 ドブ川のような薄汚れた世間に浸かりきり濁ってしまった大人の目は騙せても、汚れなき少年の瞳は騙せなかったのだ。

 ペロタンはふうっとため息をつき、軽く首を振った。


「ふふっ、このペロタンともあろうものがヤキが回っちまったぜ。

こんな少年ボーイに見透かされちまうとはな・・・」

「ペロタン!それが本当の君なんだね!」

「ああ・・・ボウズ、お前の目は誤魔化せなかったようだぜ。負けたよ・・・。」

「へへへっ。」

「ボウズ、お前の名前は?」

「僕はタロウ、タロウって言うんだ!」

「そうか、タロウか。ヨロシクな!」

「うん!」


 約10年ぶりに味わう穏やかな雰囲気を楽しんだ後、ペロタンはタロウの周りには誰も保護者らしき存在がいないことに気がついた。


「タロウ、お前1人なのか?」


 ペロタンの質問に、先程まで笑顔だったタロウの顔が曇った。

 タロウの表情で全てを察したペロタンは言葉をついだ。


「タロウ、俺と一緒に来るか?」

「えっ?いいの?」

「もちろんだ。お前は俺の恩人だからな。

それに、こうなっちまった世界を俺は全然知らねえ。道案内してくれる奴がいてくれると助かるぜ。」

「うん!」


 こうして、ペロタンとタロウの旅は始まった。

二人の前に何が待ち受けているのか、この時の二人には知る由もなかった。

 ただ、二人の前には荒野と青い空が広がっていた。



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