隣のりんちゃん

カノンみわ

第1話 隣のりんちゃんち

うちの隣の家には、りんちゃんと言う女の子が住んでいた。


りんちゃんちは四人家族で、ご両親と三歳上のお兄ちゃん、そしてりんちゃんという家族構成だった。


りんちゃんは私の一歳上で、物心ついた頃から一緒に遊んでいた。


でもりんちゃんは一年早く幼稚園に行き、一年早く小学校に行ってしまう。


お互い小学校も高学年になってくると会うことも少なくなっていった。


この年頃は一歳違うと友達も被らないし、そもそもりんちゃんと私は趣味も性格も真逆だったからだ。


私はアイドルやおしゃれが大好きで友達に囲まれるのが好きなタイプだったけど、りんちゃんは一人で本を読んでいるのが好きなタイプだった。


でもお互い少女漫画が好きという共通点もあったので、たまに遊ぶとその話題で盛り上がった。



りんちゃんと私はお互いの家を行き来していたけれど、私はあまりりんちゃんの家に行くのは好きじゃなかった。


理由はりんちゃんのお兄ちゃんだ。


りんちゃんのお兄ちゃんはりんちゃんの三歳上だったけど、顔を会わせても挨拶もなくすぐ部屋に籠るタイプだった。


りんちゃんもよくお兄ちゃんは怖いと言っていたので、私もりんちゃんのお兄ちゃんにはあまり関わりたくなかった。


正直顔もじっくり見たこともなかったので、外で会っても分からなかったかもしれない。



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りんちゃんのママとうちのママはお隣同士ということもあり仲良くしていたようで、よくりんちゃんちの話をパパや私に話していた。


正直ママは少し口が軽いところがある。


「お隣の敦史あつしくんね、この間の全国模試で100位台だったらしいわよ」


吉岡よしおかさんちのか?賢いとは聞いてたけど、すごいな」


夕食時にママとパパが喋っている。



りんちゃんのお兄ちゃんは、すごく勉強ができた。


私がりんちゃんのお兄ちゃんはいつも部屋に籠ってるというと、ママは


「勉強が好きなのよ」


と言っていた。


「吉岡さんの自慢の息子だもんね…、いつも口を開けば敦史、敦史って。

ご主人も大企業で出世してるみたいで、それも奥さんは鼻が高いみたい。この間の誕生日にはフレンチで食事して薔薇の花束送られたって自慢してた」


ママの噂話は止まらない。


パパは口を挟めず黙っている。


「でもねえ……」


ママは軽くため息をついた。


「もうちょっとりんちゃんのことも気にかけてあげたらいいのにって思うのよね…大きなお世話かもだけど」



────────────────────



りんちゃんのお兄ちゃんは中学校まで地元の公立に通っていたけれど、当然成績はトップだった。


そして高校は家から少し遠い、難関の進学校に通うことになったらしい。



真稜しんりょう高校か?あそこに入るってことは確実に国立大学狙ってるな」


またパパとママが喋っている。


「でも真稜は片道一時間半はかかるだろ。ここから駅も遠いし、自転車で通うのか?」


「それがね、奥さんが毎日車で送り迎えするんだって。自転車で体力奪われて勉強に支障が出たら困るからって。それ以外に予備校も行くらしいからその送迎もするみたいよ」


「……すごいな」


「敦史くんってもともと繊細な子だったけど、最近は反抗期でかなり接し方も難しいみたい。私から見たらやりすぎなんじゃ?って思うけど、奥さん本人は敦史のためだからが口癖なのよね。食事も敦史くんがお肉しか食べないから野菜を出さないんだって。野菜を出すと怒るからって」




この頃はもう私は、あまりりんちゃんの家には行かなくなっていた。


だからりんちゃんのお兄ちゃんとも全く会っていなかったけど、ただでさえあんなに怖そうだったりんちゃんのお兄ちゃんが更に反抗期だなんて、りんちゃんは大丈夫なのかな。


明日久しぶりに家に遊びに行ってみようかな。


そんな風に思っていた。

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