1 召喚士は絶滅危惧種?
ログアウトできない? 不安と焦りが変な汗となって背筋を伝う。ステータス画面すら開くことができない。お腹も減って来た気がするが、それも気のせいなのか現実の感覚なのか判別がつかない。どうしたものかと、カリナ(
「あー、考え事してるところ悪いんだが……」
戦いが終わったので、騎士団のライアンが話しかけて来た。まるで本当の人間であるかのような、気遣いを含んだ声音。これも違和感の塊だ。
「お嬢ちゃんは召喚士なのか? しかも剣技に体術までこなせるとはな。召喚士は今や絶滅危惧種だというのに。その若さでそれ程の使い手がいるとは、世界は広いな。しかも使い魔をその身に纏うなど聞いたこともない」
「絶滅危惧種? どういうことだ?」
と返答をしたところで、
しまった。何でよりによってこんな状況に陥っているときに女性の姿なのだろうか。こんな目に遭うのなら、メインの男性キャラ『カーズ』でログインするべきだった。後悔先に立たず、最早後の祭である。まさかこのような事態になるなど、誰が予想できただろうか。
もしかしてこのままログアウトできなければ、ずっと女性のまま過ごさなければいけないのか? またしても嫌な汗が流れ落ちる。そして、汗が肌を伝うリアルな感触や、ゲーム的なエフェクトなどなかったことにも今更ながら気付かされる。
「あ、ああ。召喚術は習得するのがかなり難しい。ここ数十年間はまともに召喚術を扱う人間など見たことがないからな」
「? ここ数十年??? 今の年代を教えてくれ!」
「? アルカディア歴2225年だ。そんなことも知らないのか?」
アルカディア歴は現実で言うところの西暦に当たる。現実と齟齬が生まれない様に、ゲーム内でも西暦と同じに設定してあるはずだ。今は西暦2125年のはず。バグでなければ、100年後の未来にログインしてしまっていることになる。カリナは頭がクラクラしてきた。
どうなっているんだ? ログアウトできない状況、100年経っているゲーム内世界。現状理解が追い付いていかない。今、頼れるのは目の前の騎士ライアン達くらいである。
「俺がインしたときは2125年のはず。はっ、ならエデン王国は? カシューはどうしているんだ?」
カシューは
「カシュー王を呼び捨てとは……、ひょっとして旧知の仲なのか? 勿論ご存命だ。我らは今回の悪魔出現について報告せねばならん。もし良かったらお嬢ちゃんも一緒に王都まで来るか? それほどの使い手なら歓迎されるだろうしな。どうする?」
ここで手を拱いていても仕方ない。カリナは折角なのでそのお誘いに乗ることにした。
「そうだな、そうさせて貰うよ。宜しく頼む」
「了解だ、ところでお嬢ちゃんの名前は何というんだ? それほどの使い手なら名が知れ渡っていても不思議じゃないんだが……」
「ああ、俺の名前はカー、じゃなかったカリナだ。宜しくライアン」
危ない、うっかりメインキャラの名を名乗るところだった。差し伸ばされた手を握って握手をする。やはり筋骨隆々な男のごつい手だ。それに比べて今のカリナのアバターはなんとも頼りない見た目をしている。鏡の様に磨かれたライアンの大盾に映る自分を、改めてしげしげと見つめてみる。
赤い髪の毛は毛先が金髪で、腰くらいの長さがある。そして左右に分かれたツインテールの様なくせ毛。頭のてっぺんからはくるりと巻かれたアホ毛が生えている。ぱっと見はツーサイドアップだが、根元に髪留めなどの装飾品は身に着けていない。自分なりに拘った結果だ。
歳の頃は十代半ばくらいの、まだ幼く見える外見。背はそれほど高くも低くもないが、今目の前にいる騎士団連中に比べるとかなり小柄で華奢だ。胸はまあそこまで大きくはないが、貧乳という程でもない。程よい大きさと形だ。大き過ぎると戦闘の邪魔になりそうだったからである。
瞳は大きく美しい碧眼。目つきは少々きつめだが、なよっとして見えるよりはマシだと思っている。まごうことなき美少女。そのせいでゲーム時代には色々と絡まれたため、一貫して「俺」口調は止めないことにしている。だが明らかに自らの性癖を露出しているため、偶にその姿に気まずさを覚えることもある。
「あー、身だしなみに気を配ってるところ悪いが、そろそろ出発する。誰か馬の背に乗せてやってくれるか?」
年頃の若い女性(中身は青年男性)を乗せるとなって、若い騎士団員達は色めき立つが、カリナは首を振って断った。
「結構だ。自分の足がある」
「いや、王都までは少し距離があるぞ?」
「問題ない。――我が声に応えよ、ユニコーン」
カリナの展開したヴェールのような魔法陣から、額から立派な鋭い角を生やした純白の一角獣がゆっくりと歩み出て来た。そしてカリナの姿を見ると、親愛を示すように近づいて来て頬ずりをした。
「お前の背に乗せてもらえるか? 近くの王国まで彼らに着いて行ってくれ」
ユニコーンは周囲にむさい男共がいることに警戒して蹄を鳴らしたが、カリナが一撫ですると落ち着いた。それからカリナはその背に軽やかに飛び乗り、跨った。
「なっ……ユニコーンだと……?」「おい、ユニコーンって……」
騎士たちがざわめく。ユニコーンがその背に乗せるのは「清らかな乙女」だけであるという伝承は、この世界でも健在である。カリナは騎士団の者達に、自分が「そういう存在」なのだと無意識のうちに証明してしまったのだ。中身の事情など知る由もない彼らの視線が、一気に生温かいものから崇拝に近いものへと変わったことに、カリナはまだ気づいていなかった。
「よし、では行くか。全軍エデン王国へと帰還する!」
ライアンの号令に全員が返事をすると、一行は数キロ先のエデン王国の王都へと走り始めた。その後ろを、カリナが乗った純白のユニコーンが優雅に追いかけた。
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※筆者の読んだことのない作品に似ているとかオマージュなどと、ひどいのになるとパクリと失礼なコメントが来ることがあります。私はその作品を知りませんし、
これだけ異常な数の作品があれば似た様な設定や展開があっても不思議ではないと思います。そんなことを言い出したら異世界転生もVRゲームもざまあも追放も令嬢ものも全てパクリですよね。全てのなろう系を知ってるわけないでしょう。
今後はそういうレビュー、コメントはブロック削除させて頂きますので、悪しからず。相手にするのも面倒なので。気に入らないのなら読まなくて結構です。
もう既に数百話も続いているので最新迄読んで全てが完全に似ているのならパクリで結構です、好きに判断して下さい。
車田先生の往年の作品の影響は聖衣ドレスシステムには敬意を持って影響は受けてます。
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