Before Death episode 22
サビヤ・シャイク
Before Death episode 22
「ケンジ……」
背後から声がした。
ケンジが振り返ると、両手に二冊の本を抱えた友人のリョウが立っていた。
「よう、ケンジ。どうした?」とリョウが声をかける。
「別に……なんでもないよ」とケンジはつぶやいた。
「さっきの、全部聞こえたぞ。あの子に言ってたこと。」
リョウはからかうように笑った。
「本気で彼女になると思ってるのか?」
その表情は、ケンジの焦りを面白がっているようだった。
「もちろんなるさ!」ケンジはむっとして言い返した。
「そしてその時、俺はニューヨーク大学の奨学金を手に入れるんだ。」
「はいはい、好きに言ってろよ。」
リョウは笑いながら、ケンジの肩を軽く叩いた。
---
「ハイデル。」
ハナが静かに名前を呼んだ。
ハイデルは少し驚いたように振り返る。
「ハナ?」
「あなた……その……」
ハナは息を整えながら言葉を探した。
「大丈夫?」とハイデルが優しく尋ねる。
「うん、大丈夫。」
そう言うと、ハナは少し間をおいて続けた。
「今日、私の家に来てくれる?」
「君の家に?」ハイデルは戸惑ったように聞き返す。
「ええ。そして、あの封筒を持ってきて。午後三時でいい?」
ハナはそれだけ言うと、返事を待たずに教室の方へ歩いていった。
ハイデルはしばらくその背中を見つめていた。
彼女の言葉が何度も頭の中で反響する。
時計を見ると、午前十一時を指していた。
「そうだ、もうすぐオンライン講義の時間だ。」
ハイデルは小さくつぶやいた。
「空と大地と海のつながり――地球の自然システムについての講義。」
それは、環境科学の授業でディスカバリーチャンネルの特別配信だった。
彼は肩のバッグを持ち直し、小さくため息をつく。
「講義が終わったら、ハナの言葉の意味を考えよう……」
そう心の中でつぶやきながら、図書館へと歩いていった。
Before Death episode 22 サビヤ・シャイク @WriterSabiya
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