甘く、照りつけ、鶯が鳴く。
天天
甘く、照りつけ、鶯が鳴く。
甘く、淡い色の勿忘草が咲き乱れている公園。
令和7年の春。ネットなんかでの出会いは、儚いもの。空想のことと思っていた。
「んっ…ちょっと!人がいるよ…んっ」
恥ずかしがりながらも、弱い僕は受け入れてしまう。
『…大丈夫。全員こっち見てねーよ』
照りつける太陽を避けるように、木陰に立っている2人は、公園にいる全員の目線の外にいた。
集団の中にいながらも、2人だけの日陰の世界。2人っきりの世界なのだ。止める者は誰もいなかった。
「んっ…んっ…………。んんっ!!」
『…ん?…ははは』
僕の耳に、わざと吹きかけるようにつぶやく
『…悪い子だな』
「だって…しらなっ…んっ!」
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集団の世界へ戻ってきた2人は、ベンチに腰掛け、つかの間の休憩を取っていた。
「ねぇ、君は、誰にでもこんなことしてるの?」
『…ははっ、そんなわけないじゃん。お前だけだよ。』
僕の頭を大きな手で撫でながら、諭すように話してくれる。
「そっか…ふふ、嬉しい!初めて!」チュッ
『……!おいおい、今は周りに見られるぞ?』
相手は僕がキスした頬をかきながら、目を丸くしている。
「ふふふ、さっきのお返し!」
『ったく、なんだよ。…なぁ、これ吸ったら、次のとこ行くか?』
相手はたばこを1本、箱からとんとんと取り出しながら聞いてくる。
「…うん。」
精一杯の勇気を振り絞って、首を縦に振った僕のスマフォには、新しい返信メールが届いていた。
そんな2人の関係を嘲笑うように。
鶯が。鳴いた。
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・出来事とは一切関係ありません。
※文章の無断転載・転用・コピーはご遠慮ください。
甘く、照りつけ、鶯が鳴く。 天天 @tenten0525
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