第19話 私も知らない情報なんだけど!

「ドラゴンハンバーグ忍者さんも魔小連支部においでよ。すぐそこだしさ!」


「確かに魔物の事話すならそっちのが都合良いトゲ」


「むう…」

ドラゴンハンバーグ忍者は少し考える

「承知した。失礼致す。」


「じゃあとりあえず…『偽装束アクトドレス』」


「何をする」

忍者は大剣に手をかける、すぐ斬ろうとするなこの人


「大丈夫ただの透明化だから。流石にその格好で街歩くのはちょっとね(私も大概だけど)」


「…一理あるな」


生後一週間もたってないのにこの人は何処でこのやたら常識的な感性を身に付けたのだろうか。



***


泥地哀浜支部に戻ると事務員さんが居た。


「あれ今日非番じゃなかったッスか?」


「非番だからよ。魔物が出た以上貴方達に何かあったらすぐ出れる様に待機するのが義務なの」


この仕事思ったよりしんどいのかもしれない。


「ところで真鈴ちゃんは?」


「あーちょっと目立つ客人連れて来たので透明化してもらってるッス」


「『偽装束』解除。」

ついでに変身も解除する。いつもより長く変身してたからかどっと疲れがきた。


「あ本当ね、お疲れ様真s__ッ!???」


隣にいたドラゴンハンバーグ忍者を見るや、事務員さんは絶句した。こんなに動揺する所は初めて見た


「えーっと…こちらドラゴンハンバーグ忍者さんです」


「突然邪魔して申し訳ない。」

忍者は礼儀正しく頭を下げる


「えっあっ、ああそこにかけて下さってて、今お茶淹れますから」

どうにか冷静さを繕って事務員さんはぎこちなく動く。


「ご厚意にはあやかりたいが、それがし顔がハンバーグ故に飲み食いは出来ぬ。」


「あ、それはご無礼を。」


その辺はアンパンの人みたいに都合よくないのかよ。


「悪いが拙者あの学校に居ないと落ち着かぬのだ。早めに本題に入らせて頂きたい」


「悪かったトゲね、と言う訳で魔物大解説のコーナートゲ〜」

大量の資料カンペを積んだアーちんがホワイトボードの前で高らかに宣言する。


「まず、魔物というのは2010年に太平洋上に出現した謎の青黒い球体、通称『魔球雫マキューダ』によって生み出された生命体トゲ。」


現社の教科書にも載ってる有名な話だ。


「ゆえに魔物は基本的に破壊衝動以外の思考や理性、欲望と言った物を持たないトゲ。

殆ど肉で出来たロボットだトゲね。

つまり生半可な攻撃で撤退なんて事はしてくれないトゲから対処法は駆除のみトゲ。ドグラ・マグロみたいなのは例外中の例外トゲね」


なんかナチュラルに知らない話が始まった。


「ちょっと待ってアーちん。その情報私も知らされてないんだけど!」


「え、アーちんまさか教えてなかったの?」

事務員さんが驚いている。


「真鈴ちゃんは言わなくても魔物消し炭にするから別にいいかなってトゲ」


「言っとけよ!」

これでもエグい死に方する魔物ちょっと不憫だなとか葛藤してんだぞ。消し炭にはしたけど。消し炭にはしたけども!


「アーちんって喋る割に言葉足らずッスよね」


「トゲァ!」

ダメージを喰らっている。良いぞ黄間さんもっとやれ。


「魔物の弱点などは無いのか」

やや置いてけぼりにされていた忍者が口を挟む。


「失礼、取り乱したトゲね、話を戻すトゲ」


「同じ人間が二人といない様に、魔物にも個体差があるトゲ。ゆえに共通の弱点は無いと言って良いトゲ。

 でも魔球雫マキューダは魔物を作る際、地球上の動植物を模しているトゲから、その元となる動植物の弱点はその魔物の弱点にもなるトゲ。つまり対抗策を練るにはその辺の膨大な知識が必要トゲね。」


「成程、確かに拙者は世を知らぬな。生物か、教えを乞う相手さえおれば…」

小学生の願いで生まれたのだから無理もないだろう。


「教えを乞う?…君は自分が何処に住んでるかわかってないトゲか?」


「あそっか学校だもんね。多分図書室とかにあるよ生き物図鑑。」


「あの書庫か。成程そう言う場所だったのか。礼を言うぞ魔法少女達よ。では拙者これにて」


どろん


何処からか取り出した煙玉が炸裂する。


「ゲホッ煙たっ…普通に帰れトゲ!」


「換気扇!換気扇ON!」


だめだ白過ぎて前が見えねえ。誰かがスイッチを押した音がした。換気扇が回る。

やがて煙が晴れていく。もう忍者の姿はなかった。


「なんでわざわざこんな帰り方したんだろ」


「…多分街歩けないって知ったから岩ヶ瀬さんに気を遣ったんじゃないスかね」


つくづく変なところで真摯だなあの人。


…。


「いや煙玉いらねえだろ」


_____________________

続く



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