僕の人生は灰色のはずだったのに
瀬野みらい
第1話
近年異常気象が続き、4月上旬には桜は散り葉桜になり始めている。桜の花びらの落ちる通学路を歩く高校生は幻想的で青春真っ只中に映るだろう。
高校生活を楽しもうとしている者や不安に駆られている者。まだ自分の進路についてうまく飲み込めない者。それぞれたくさんの思いを抱えてここを歩いていることだろう。僕は確信している。この3年間、または僕の人生はずっと灰色だろうと。新品の上靴を履いて、校舎の中に入る1階は職員室、保健室、家庭科室、生物室で生徒たちの教室は2階3階にあった。1年生の教室は2階の左端から始まる。1年2組の教室に入るともうグループが出来始めている。同じ学校出身の顔なじみや席が前後左右生徒で話し合っていた。自分は廊下から2列目の前から4番目の席だった。で席には満足した席に着くなり、僕はうつむいて腕を組んで枕にしてつぶした。
早く終わってくれと思った。入学式の校長の挨拶や担任の挨拶。そして教室での自己紹介オリエンテーションがどんどんと進んでいく。入学式が終わり、多くの生徒
が連絡先の交換や友達作りに励む中、僕はさっさと帰った。
本屋で立ち読みをしてざっと見る。スーパーに行って買い物をする。家に帰ってきてベッドに飛び込むと、スマホを取り出してゲームと動画再生に勤しむ。この生活がまた毎日続くものだと思っていた。変化や希望は無いが、リスクも苦しさもないこの生活に納得していた。何の不安もない。
入学式から2週間もすれば大体グループができる。自分はどこにも所属せずにのんびり過ごしていた。ある日の朝、駅のホームで同じ学校の制服の女子生徒を見かけた。背筋が凛としていて、彼女はイヤホンをして参考書を開いていた。そして、ファイルを取り出しプリントを出してぶつぶつと暗記していた。しばらくすると電車がやってくる。その女子生徒がファイルを閉まった際に、茶封筒を落としていった。後ろにいた人は気にも止めない。僕はなんとなく近づいて行き、茶封筒を拾って電車に乗った。茶封筒の表紙に留学志願者様と書いてあった。きっと大事なものだから返そうと思ったが、満員電車の為見渡すことが出来ず見当たらない。
その後も女子生徒に会うことは出来なかった。自分が手に持っている封筒は大事なものだろう。誰に渡すべきかわからず、とりあえず職員室に入り担任に拾ったと伝えて渡した。
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